日本大百科全書(ニッポニカ) 「銭湯新話」の意味・わかりやすい解説
銭湯新話
せんとうしんわ
談義本。5巻5冊。伊藤単朴(たんぼく)(1680―1758)作。1754年(宝暦4)江戸刊。角書(つのがき)に「里俗教談」とある。書名は中国の怪異小説『剪燈新話(せんとうしんわ)』のもじりで、作者が近所の銭湯での話を聞き書きしたものという。内容は怪談のストーリーで読者の興味をひきつつ教訓の意を訴えるという、本書より2年前の『当世下手(いまようへた)談義』に始まる教訓談義本の典型というべき15の話を収める。作者については三田村鳶魚(えんぎょ)著『教化と江戸文学』に詳しく、また当時の談義本評判記『千石篩(とおし)』の評判は参考になる。『心学叢書(そうしょ)・第一篇(ぺん)』(1904・博文館)などに翻印がある。
[中野三敏]