中国、明(みん)初の文語体の怪異小説集。瞿佑(くゆう)作。四巻20編と付録一編からなる。もとは『剪燈録』といって全40巻もあったが、作者が筆禍により流謫(るたく)されていた間に散逸してしまい、のちにある地方官吏がその残編を入手して、流謫地に行って作者の校閲を受けた。作者がそれらに一編を付録したのが、現在みられるものである。自序によると、『剪燈録』は古今の怪異を編集して、勧善懲悪のほか、不遇な者への同情を込め、同時に自分の失意を慰めるための余技であったことが知られる。
21編の物語はそれぞれに特色のある怪異譚(たん)で、唐の伝奇小説の系統を引き、怪異と艶情(えんじょう)の交錯する世界を妖麗(ようれい)な筆致で展開している。編中には詩が多く使用され、また詩をつくる話や詩人にかかわる話が多く、文体にも四六駢儷(しろくべんれい)体の美文が使われているのは、作者が詩人であったことと大きな関係があり、小説に典雅な趣(おもむき)を添えている。出版後は非常な流行をみせ、同類の作品が数多く出現し、色情的な作品として当局に禁止されて消失したが、のちに清(しん)代の末に日本から逆輸入された。日本には室町時代の末に渡来したらしく、中村某(なにがし)の『奇異雑談集(きいぞうだんしゅう)』に「牡丹燈記(ぼたんとうき)」ほか二編の翻訳が収められ、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)には版本が刊行され、以後江戸時代の怪異小説の分野に大影響を与えた。なかでも「牡丹燈記」はいくつかの改作を経て、三遊亭円朝(えんちょう)の名作『牡丹灯籠(ぼたんどうろう)』を生んでいる。
[藤田祐賢]
『飯塚朗訳『中国古典文学大系39 剪燈新話』(1969・平凡社)』▽『山口剛著『近世小説』(1931・創元社/『山口剛著作集2』所収・1972・中央公論社)』
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