日本大百科全書(ニッポニカ) 「長奥麿」の意味・わかりやすい解説
長奥麿
ながのおきまろ
生没年未詳。名は意吉麻呂とも書く。奈良時代、持統(じとう)・文武(もんむ)両天皇の時代(686~707)ころの下級官人、歌人。『万葉集』に短歌14首を残す。702年(大宝2)の持統太上(だいじょう)天皇参河(みかわ)国行幸その他の行幸に従行しての作や詔(みことのり)に応じての作が六首あり、いわゆる宮廷歌人的な人と思われる。「引馬野(ひくまの)ににほふ榛原(はりはら)入り乱れ衣(ころも)にほはせ旅のしるしに」(巻1)は、当時の旅の歌には少ない、明るく躍動する旅心を詠出した佳作。一方、宴席における即興の戯笑歌にも手腕のほどをみせている。
[遠藤 宏]
『藤田寛海著『長意吉麻呂』(『万葉集講座5』所収・1973・有精堂出版)』