間質性膀胱炎(読み)かんしつせいぼうこうえん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「間質性膀胱炎」の意味・わかりやすい解説

間質性膀胱炎
かんしつせいぼうこうえん

中年女性に多くみられる膀胱に生じる炎症で、膀胱壁の全層にわたる著しい線維化を特徴とする。細菌感染によるものでないことはわかっており、膀胱粘膜の異常のほか自己免疫やアレルギーなどのかかわりが指摘されることもあるが、原因は不明で、日本では比較的まれな疾患である。浅い特異的な潰瘍(かいよう)を形成するものはハンナー潰瘍Hunner ulcerともよばれ、潰瘍を形成しないものと区別されるが、同義として扱われることもある。出血を伴う潰瘍は瘢痕(はんこん)化したのちに緩解するが、別の部位からふたたび出血することもある。膀胱癌(がん)の早期に似た症状がみられ、昼夜をとわない頻尿や尿意逼迫(ひっぱく)、膀胱痛や膀胱不快感およびこれらの症状に付随する睡眠障害、また血尿も伴い、進行すると膀胱萎縮(いしゅく)による容量の減少をきたす。症状は持続することが多く重症化すると日常生活に支障をきたす。治療は、症状軽減の目的で薬物投与や膀胱水圧拡張術による膀胱の拡張、麻酔下での潰瘍の焼灼(しょうしゃく)などを行う。

[編集部 2016年11月18日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

六訂版 家庭医学大全科 「間質性膀胱炎」の解説

間質性膀胱炎
(腎臓と尿路の病気)

 間質性膀胱炎は40歳以降の女性に多い病気で、膀胱内に尿が充満すると下腹部から陰部に痛みを生じます。尿意(尿をしたくなる感じ)や残尿感(尿が残っている感じ)は1日に何度も繰り返し、時として我慢ならないほど強くなり、仕事や睡眠に影響を及ぼすこともあります。コーヒー、紅茶、アルコール、たばこなどの刺激物は症状を悪化させます。

 原因は解明されていませんが、膀胱の粘膜の異常やアレルギーが関係しています。初診時には、尿路感染症(にょうろかんせんしょう)(膀胱炎など)や尿路結石(にょうろけっせき)などを除外することが大切です。確定診断は膀胱内に膀胱鏡を挿入し、粘膜を観察したり、粘膜組織を採取することで行います。

 確立された治療法はありませんが、内服治療では、抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、抗コリン薬鎮痛薬が使用されます。また、膀胱を水圧で拡張することや、膀胱内に抗炎症・筋弛緩(きんしかん)作用のあるDMSO(ジメチル・スルフォキシド)、粘膜修復作用のあるヘパリンなどを注入する方法が行われています。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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