阿波北方・阿波南方(読み)あわきたがたあわみなみがた

日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿波北方・阿波南方」の意味・わかりやすい解説

阿波北方・阿波南方
あわきたがたあわみなみがた

徳島県の慣用的地域区分で、吉野川流域低地の畑作地帯を北方、水田単作地帯の沿岸部を南方という。現在の県北と県南の称である。北方は、大化改新以前の粟(あわ)の国で、忌部(いんべ)氏が治め、大麻比古(おおあさひこ)神社、大粟神社が祀(まつ)られているように、アサアワがつくられてきた。吉野川流域は、アイ作から現在では施設園芸地帯として阪神への蔬菜(そさい)供給地となっている。洪水は北方の人々を苦しめてきたが、肥沃(ひよく)な土壌はアイ作を発展させた。中流域は香川県との交流が多く、借耕牛(かりこうし)といって役牛を讃岐(さぬき)に貸し、逆に藍(あい)仕事に讃岐の男たちが阿波に出稼ぎにきた。「讃岐男に阿波女」の峠越しの通婚も多い。南方は長(なが)氏の国で、早くから海に生業を求め、遠洋漁業が盛んである。とくに対馬(つしま)や五島(ごとう)の九州方面への出漁が多い。現在も博多(はかた)港には徳島県人が数多く活躍する。海神八幡(はちまん)の信仰が厚く、鳴門(なると)市の宇佐八幡には人身御供(ひとみごく)、海陽町の大里(おおざと)八幡には古式神事が伝承する。

[高木秀樹]


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