人身供犠(じんしんくぎ)ともいう。神をはじめ超自然的存在への捧(ささ)げ物のうち、とくに生きた人間を殺すことにより、その血や肉体や霊魂を捧げることで、南・北アメリカ、アフリカ、古代エジプト、インド、中国など広範に行われた。その目的は供犠一般と同じく、(1)神などの加護を得て、人間にとって望ましい結果を得ようとすること、(2)疫病の流行、天災などの災厄を神などの怒りによると考えて、それをなだめ慰めるため、(3)食人儀礼と結び付いて、神に人間を捧げると同時に、その血や肉を神とともに食べ、そのことによって通常とは異なる力を得ようとすることなどである。人間が捧げられるのは供物としての価値がもっとも高く、したがって、効果が高いと考えられたからであろう。
人身御供は定期的なものと一時的なものとがあり、定期的なものは(1)と(3)の、臨時のものは(2)の目的で行われる。定期的にしかも多数の人間を人身御供にした例として、メキシコのアステカ人がある。彼らは太陽を神格化し、自分たちを太陽の民と考えた。そして、その神が十分な力をもち、アステカを加護してくれるためには栄養分として人間の生き血を捧げなければならないと考え、毎日多数の人間を殺してその心臓と血とを神に捧げたのである。臨時には、アウィソトル王(在位1486~1502)の即位式には8万人の人間がいけにえにされたという。
人身御供となる人間は、自分の集団から選ばれる場合と奴隷や敵の捕虜などから選ばれる場合とがあり、アステカ人の場合は後者であった。自分の集団の人間を供犠にするときには、「白羽の矢」が立つなどという形での、神意によって選ばれることが多い。同じ人身御供であっても前者と後者とではやや意味が異なると考えられる。なお、日本武尊(やまとたけるのみこと)の東国遠征の際に、弟橘姫(おとたちばなひめ)が海を静めるため、自ら海に入ったというような自殺の形をとることもある。殉死もまた一種の人身御供である。
[波平恵美子]
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