日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化ナトリウム」の意味・わかりやすい解説
塩化ナトリウム
えんかなとりうむ
sodium chloride
ナトリウムと塩素の化合物。通称は食塩。天然には岩塩として、ヨーロッパ、アメリカ、中国などの各地に巨層をなして産出する。ドイツのシュタッスフルトなどが有名であるが、日本ではみいだされていない。岩塩から掘り取ったものは工業用としてそのまま用いられるが、食用にするには、多くの場合、再結晶法による精製が行われる。海水中にも平均2.8%ほど含まれる。日本では塩田法による採取が普通であったのが、近年イオン交換膜を用いる方法が進歩し、1971年(昭和46)以来塩田は姿を消している。
[鳥居泰男]
性質
結晶中ではナトリウムイオンと塩化物イオンが交互に規則的に配列した構造をとっており(塩化ナトリウム型構造)、イオン結晶の構造の典型の一つである。融点以上では揮発性が高く、気体状態ではイオン対のNaCl(Na―Cl 2.51Å)が存在する。化学的に純粋なものは潮解性がないが、粗製品は塩化マグネシウムなどの混在のために潮解性を示す。水によく溶けるが、アルコールには溶けにくい。飽和水溶液からは、0℃以下で無色単斜晶系の二水和物が生じ、零下21.3℃で含氷晶が析出する。これを利用し、塩化ナトリウムと粉砕した氷とを混ぜることによって(25対27)零下21℃の寒剤をつくることができる。
[鳥居泰男]
用途
塩素、塩酸、ナトリウム、水酸化ナトリウムその他ナトリウム塩の製造原料として重要であり、また、陶磁器の釉薬(ゆうやく)、せっけんの塩析などに使用される。そのままで調味料とするほか、みそ、しょうゆの原料、食品貯蔵などに用いられる。医薬品として生理食塩液、リンゲル液などにも用いられる。そのほか、大きな単結晶には、赤外線分光器のプリズムといった特殊な用途がある。
[鳥居泰男]
塩化ナトリウム(データノート)
えんかなとりうむでーたのーと
NaCl | |
式量 | 58.4 |
融点 | 800.4℃ |
沸点 | 1413℃ |
比重 | 2.16(測定温度20℃) |
結晶系 | 等軸 |
屈折率 | (n)1.5443 |
溶解度 | 35.7g/100g(水0℃) |