日本大百科全書(ニッポニカ) 「音響インピーダンス」の意味・わかりやすい解説
音響インピーダンス
おんきょういんぴーだんす
acoustic impedance
音波が伝播(でんぱ)するときの音圧pと媒質の運動速度vとの関係は電気回路における電圧と電流の関係によく似ており、等価回路による取扱いがしばしば行われる。そのとき音響インピーダンスはp/Svと定義される。ここでSは音波の波面の面積であり、Svは体積速度という意味をもつ。とくにS=1の場合、すなわちZ=p/vで定義されるZは固有音響インピーダンスとよばれ、媒質特有の量である。一方、pとvの関係は運動方程式で結ばれており、これから正弦音波の場合Z=ρc(ρは媒質の密度、cは音速)という関係が導かれる。音響インピーダンスの利用例として、二つの媒質AとBが平面で接しており、A媒質中を伝播する平面波が境界面に垂直に入射する場合を考える。それぞれの媒質の固有音響インピーダンスをZA、ZBとすると境界面での音波の振幅反射率は
(ZA-ZB)/(ZA+ZB)
と計算される。すなわち、両媒質の音響インピーダンスZA、ZBを等しくしてやれば反射がおこらない。これは音波を種々の媒質中で有効に伝播させようとするときに重要となる。また逆にZAに比べZBを小さくしてやれば、界面で音波をほぼ遮断することができる。
[比企能夫]