一般に、弾性体中をその弾性に基づいて伝わる振動現象を音波という。普通「音」と称しているのは、振動体からの振動が縦波として空気中を伝わり耳に達するもので、可聴振動数、およそ16ヘルツから2万ヘルツのものをいう。これより振動数が大きくて、音としての感覚を引き起こさない波を超音波という。
音波を記述する微分方程式(波動方程式)より、音速cは、体積弾性率をκ(カッパ)、密度をρ(ロー)とすると、
という形をしていることがわかる。初めニュートンは、媒質である気体の変化を等温変化とみなして、体積弾性率を空気の圧力で計算したが、実測された音速を得ることができなかった。1816年にラプラスは圧力と体積の間に成り立つ関係を断熱変化であるとして説明した。その結果、0℃、1気圧での音速が331.5m/secであり、t℃のときには、331.5+0.6t(m/sec)となり、実測とよく一致する。
[奥田雄一]
『小橋豊著『基礎物理学選書 音と音波』(1969・裳華房)』▽『吉川茂・藤田肇著『基礎音響学――振動・波動・音波』(2002・講談社)』
ふつうに音波というときには,空気を構成する微小粒子の振動によって起こる圧力変化の波動で,その周波数が人間の聴覚によって音として感ずる範囲にあるものをいうことが多い。空気中の音波に限っても,可聴周波数以上の超音波,可聴周波数以下の超低周波音など広い周波数範囲にわたる音波が存在する。一般に音波ができるためには,媒質の中で起こった運動に対して,これを続けようとする慣性力と元の位置に戻そうとする弾性力との存在が必要である。こうした条件を満足する波動は,一般に弾性波と呼ばれており,そのために広い意味では空気中の音波だけでなく,一般の気体,液体および固体中の弾性波を総称して音波という。空気をはじめとした気体は体積の変化に対して弾性を示し,媒質の振動方向が波動の伝搬方向に平行な縦波の形態をもった音波だけが存在する。この場合には,圧力の変化に応じた気体の圧縮,伸張の状態が伝わるので疎密波ともいう。液体の場合にも,非常に高い周波数を除けば体積弾性だけが関係するので,気体中と同様に縦波としての音波だけが存在する。これに対して固体では,弾性力として体積弾性のほかにずれの弾性も関係するので,固体を伝わる音波には縦波のほかに,媒質の振動方向が波動の伝搬方向に垂直な横波も存在する。音波は反射,屈折,干渉,回折,散乱など波動についてのすべての性質を示す。また媒質の種類および波動の形態に応じた伝搬速度をもっている。音波の伝搬速度は,媒質の弾性的性質に関係する。ふつうには音速度は周波数にはよらないが,非常に高い周波数領域では,周波数による音速度の変化が起こる。この現象を分散といい,その周波数付近では音の減衰が非常に大きくなる。これらの現象は,物質構造の解明に利用されている。
なお,超流動状態の液体ヘリウムIIでは温度の変動が波の形で伝わる場合があり,これを第2音波と呼んでいる。このほか超流動状態の液体ヘリウムには第3音波,第4音波と呼ばれる特殊な音波が存在し,前者はヘリウム膜における縦波表面波,後者は微細な粉末の詰まった容器中にある超流動ヘリウムでの音波をいう。また,フェルミ統計に従う粒子からなる液体(フェルミ液という)では,絶対0度付近でその中を伝わる波動をゼロ音波と呼んでいる。
→音 →超音波
執筆者:子安 勝
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…耳に聞こえるといっても,人間以外の動物の可聴振動数範囲は,人間のそれとは必ずしも同じではない(図1)。コウモリが自分から出した音波を利用して,暗やみの中でも障害物などの存在を感知することはよく知られている。この場合の音は人間の耳には聞こえない超音波領域にあるが,これも広い意味での音に含まれる。…
※「音波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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