音が媒質中を伝搬する速度。微小振幅の音波については,媒質の種類にはよらず,媒質の密度をρ0,その体積弾性率をとして,音速はで与えられる。これはI.ニュートンが理論的に求めたもので,彼は気体について等温変化を仮定し,=P0(P0は気体の静圧)とした。これから求められる空気中の音速は280m/s(0℃)となる。この値は1738年にアカデミー・デ・シアンスが行った音速の本格的な実測の結果333.2m/s(0℃)よりもかなり小さい。その後P.S.ラプラスが気体の断熱変化を考えて,(γは定圧比熱と定容比熱の比)という式を出した。これによると空気中の音速はc=331.5m/s(0℃)となり,実測値に非常に近くなる。ただし,可聴周波数以下の非常に低い周波数になると,圧力変化が等温変化に近くなるので,音速はニュートンの式による値に近づく。実用的には空気中の音速は温度をt℃として,c=331.5+0.6t(m/s)で求められる。
音速の式からわかるように,密度の小さい気体中では音速は大きくなり,例えば水素中の音速は1270m/s(0℃)となる。また液体の体積弾性率は気体のそれよりも非常に大きいので,一般に音速が大きく,水中では約1430m/s(15℃)となる。固体の場合には,体積弾性のほかに形が変わることに対しても弾性をもっているために各種の弾性波があり,それぞれに応じた音速をもっている。無限に広い固体の中での縦波の速度はとなる。ここでEはヤング率,ρは密度,σはポアソン比である。ゴムのような弾性体を除いて,一般に固体中の音速は非常に大きい。なお,流体の速度をq,その流体中を伝わる音速をcとするとき,M=q/cをマッハ数という。
執筆者:子安 勝
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音波が媒質中を伝わる速度。流体中の音波はすべて縦波であるが、その速度cは、流体の体積弾性率をκ(カッパ)、密度をρ(ロー)とするとc=(κ/ρ)で与えられる。気体の場合では、理想気体の状態方程式に従うとすると、c=(RTγ/M)で与えられる。Rは気体定数、Mは分子量、Tは気体の絶対温度、γは定圧比熱と定積比熱の比である。したがってcはに比例し、圧力にはよらない。温度t℃のときの空気中の音速は
c=331.5+0.6t(m/sec)
となる。すなわち、0℃のとき毎秒331.5メートルで、温度が1℃上がると音速は毎秒0.6メートル速くなる。
液体の場合は、ほとんどの液体で音速は毎秒1000メートルから1500メートルであり、1℃上昇するに従い毎秒2~5メートル減少する。水中の音速は、温度とともに増加し、74℃で極大になる。これは水素結合がもたらす水の多くの異常物性の一つである。固体の場合には、空気中の場合のような縦波のほかに、二つの横波が存在する。固体中の音速は、結晶の状態、結晶軸の方向に依存する。ゴムなどでは、混合物の割合による振動数に依存する。一般に固体中では、温度が上がると音速は小さくなる。
[奥田雄一]
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[音の伝搬]
空気中に発生した音は,一定の速度で伝搬する。静止した空気中での音速c(m/s)は温度に関係し,t℃のときc=331.5+0.6tで与えられる。ふつうには15℃のときの値,c=340m/sが使われることが多い(音速)。…
※「音速」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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