飛神明(読み)とびしんめい

改訂新版 世界大百科事典 「飛神明」の意味・わかりやすい解説

飛神明 (とびしんめい)

伊勢神宮神霊影向(ようごう)し神社としてまつられたもの。その神社は今神明と呼ばれることが多かった。初見は1407年(応永14)2月の若狭白椿上谷に影向があり,10年に今神明と称されたものである(《今富名領主代々次第》)。山城宇治の神明は,狂言《今神明》に〈神明の飛ばせられ〉とあり,影向であった。神宮は洛中洛外のこうした神宮の勧請(かんじよう)を禁止するよう38年(永享10)に解状を提出している。また89年(延徳1)の吉田山の斎場所へ伊勢神器が降臨したという事件も飛神明の信仰背景にしたものであった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の飛神明の言及

【神明社】より

…伊勢神宮の神領(神戸(かんべ),御厨)の設定された地に天照大神の分霊を迎えて神明社が創建される例は,鎌倉時代に見えはじめ,早いものとしては1186年(文治2)鎌倉甘縄(あまなわ)の神明社が源頼朝によって修理を加えられて,〈伊勢別宮〉とされていた事例がある(《吾妻鏡》)。伊勢信仰の発展とともに,この風は神戸,御厨以外の地でもしきりに発生し,ことに南北朝期以後,今(いま)神明とか飛(とび)神明とかよんで,伊勢内外宮の神が各地に迎えられてまつられることがあいついだ。京都近くの宇治神明社は1416年(応永23)ころから皇族や公卿,禅僧の日記に頻出するようになるが,狂言《今神明》にも〈宇治へ神明の飛ばせられた〉とある。…

※「飛神明」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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