食散(読み)くいちらす

精選版 日本国語大辞典 「食散」の意味・読み・例文・類語

くい‐ちら・す くひ‥【食散】

〘他サ五(四)〙
食べ物をこぼしたり散らかしたりして食べたあとをきたなくする。
打聞集(1134頃)三井寺事「委く見は鯉のいろこ骨を飡ちらしたり」
② あれこれと箸をつけて、少しずつ食べる。
徒然草(1331頃)四八「供御を出だされて食はせられけり。さて食ちらしたる衝重を、御簾の中へさし入れて」
③ あれこれと、いろいろな事に少しずつ手を出す。あちこちの異性に手を出す。
破垣(1901)〈内田魯庵〉一「散三女を喰散らした此方(こっち)殿様のやうなには」
④ さんざん、利用する。
洒落本・浪花色八卦(1757)桔梗卦「うつけ客のいやみあるは喰いちらして売り〈略〉ひどいめにあわせ」

くい‐ちらし くひ‥【食散】

〘名〙
① 食べてそのあとを散らかすこと。あれこれ少しずつ食べて、残すこと。また、その食べ物。
人情本・閑情末摘花(1839‐41)初「竹川はここの喰ちらしをとり納め」
② あれこれと、いろいろな事に手をつけること。方々の異性に手を出すこと。
※洒落本・寸南破良意(1775)一座「『おれがのは、沙汰なしだよ』『金さん久しいもんだ。又くひちらしかへ』」
半七捕物帳(1923)〈岡本綺堂帯取の池「その千次郎といふ男は、〈略〉無暗に食(ク)ひ散(チラ)しをするやうな浮気者ぢゃあるめえね」

たべ‐ちらか・す【食散】

〘他サ五(四)〙
※楡家の人びと(1964)〈北杜夫〉二「桃子の丹精こめたかつお節と魚のだし汁のかけられた御飯が食べちらかされたまま放置され」
② (比喩的に) 何人もの異性と関係する。
細君(1889)〈坪内逍遙〉一「きれいに手を切るといふ器用な機転はなく、たべちらかして歩く」

たべ‐ちら・す【食散】

〘他サ五(四)〙
① 食べ物を食べる時に、あたりにこぼし散らしてよごす。くいちらす。たべちらかす。
※小鳥の巣(1910)〈鈴木三重吉〉下「子供が食べ散らした蜜柑の皮が」
② あちこちの食べ物に箸を出して、すこしずつ食べる。くいちらす。たべちらかす。

くい‐ちらか・す くひ‥【食散】

〘他サ五(四)〙 =くいちらす(食散)
※人情本・花筐(1841)初「諸方(はうばう)喰ひちらかすよりゃア、彼(あ)の娘(こ)を世話にでもしてお置きなさると」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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