デジタル大辞泉 「沙汰」の意味・読み・例文・類語
さ‐た【沙汰】
1 物事を処理すること。特に、物事の善悪・是非などを論じ定めること。裁定。また、裁決・裁判。「地獄の
2 決定したことなどを知らせること。通知。また、命令・指示。下知。「
3 便り。知らせ。音信。「このところなんの
4 話題として取り上げること。うわさにすること。「事件の真相たるや、世間であれこれ
5 問題となるような事件。その是非が問われるような行為。「正気の
[類語](2)命令・言い付け・
日本中世で決定,命令,処理など広範な意味に用いられる語。(1)権力者が政務を執ること(世の沙汰をする)。(2)土地の支配・領有に関して,(a)土地を知行する(所を沙汰する,庄務を沙汰する)。(b)年貢などを徴収または納付する(年貢を沙汰する)。これを怠る行為や状態は無沙汰といわれる。(3)とくに中世的な法律用語としては,是非善悪を論じ子細を明らかにするという原意があって,(a)裁判,訴訟のこと。所務沙汰(不動産訴訟),雑務沙汰(動産および債権に関する訴訟),検断沙汰(刑事訴訟)などと用いる。〈沙汰し付く〉というのは実力によって執行すること。(b)支払う,または弁償する。弁済と同義。〈沙汰し弁(わきま)う〉という用法もある。(4)その他,決定する(恩賞を沙汰する)。論議することおよびその論点。命令,指示,職務に伴う責任などを含めて〈何某の沙汰として〉とか〈何々の沙汰あるべし〉などと用いる。また報告,通知の意味もあり,《日葡辞書》は話,うわさ,取調べを掲げる。
執筆者:羽下 徳彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
鎌倉幕府の裁判制度を初心者向きに解説した書である『沙汰未練書』に、「沙」は砂、「汰」は選び分ける義であるから、砂を水中で揺すって中から砂金などを選別することをいうとの趣旨が述べられている。これは字義にもっとも近い説明であろう。「沙汰」はここから転じて、人や物事の是非、善悪、精粗を選び分け、正しく判断し処理する意味となった。この意味に近い用法には、中世における「裁判」「訴訟」をさすときの沙汰があり、すこし意味が広がって「評議する」「議論する」ことも沙汰といわれた。次には訴訟や評議の結論を執行すること、たとえば勝訴者に係争地を引き渡すことを「沙汰し付ける」「沙汰し据える」などという用法がある。この意味が拡大すると指図や命令そのものが沙汰と称され、また命令に従って政務を行うこと、荘園(しょうえん)の荘務を行うこと、具体的にいえば、年貢を賦課したり徴収したりすることとか、年貢や負債を支払うことも沙汰と表現された。さらに直接政務にかかわらない伝達事項や通知、ニュース、噂(うわさ)といったことも沙汰といわれる。「沙汰の限り」という語が鎌倉幕府の文書に出てくるときは、「幕府の裁量の限度」といった原義に近い使われ方をしているが、近世や現代では「もってのほか」といった意の一般的な言い回しになっている。これらのことは、この語のもつ意味の広がりをよく表している。
[桑山浩然]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
執務すること,取り扱うこと。とくに訴訟・裁判・判決をさしていう。中世後期の式目注釈書はしばしば沙汰を「イサコヲユル(砂を選る)」ことと説明している。砂中から砂金を選び出すことで,理と非を弁別する意味であるという。訴訟・裁判をさす沙汰は多くの複合語の語素となり,所務沙汰・検断沙汰・雑務沙汰など裁判類型をさす語として使用された。また尋沙汰(たずねざた)・明沙汰(あきらめざた)など個々の手続きをさす語としても使用された。ほかに「日葡辞書」が沙汰を,話・うわさ・取調べとしているのをはじめ,政務を執ること,所職(しょしき)を知行すること,年貢を徴収または納付すること,弁済・弁償すること,議論し決定することなど,多様な意味に用いられた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…古代・中世,律令制の国のうち,国司以外の公卿・廷臣や社寺等が吏務(りむ)(支配・統治の実務)の実権をもつ国。沙汰国,給国ともいい,吏務の実権をとる者を知行主とか国主という。 律令制の地方統治制度である国司制度がしだいにくずれ,国守(=受領)の地位が利権化する一方,公卿・廷臣らの俸禄制度が無実化するにともない,11世紀中ごろから公卿の子弟を諸国の守に任命し,その公卿に吏務の実権をとらせ(これを知行とか沙汰という),その間に収益を得させることがしだいに慣例となった。…
※「沙汰」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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