日本大百科全書(ニッポニカ) 「食用貝」の意味・わかりやすい解説
食用貝
しょくようがい
edible mollusks
人間に食用とされる貝をいう。貝類は魚類などのように逃避力が強くないので、採取道具の発達していなかった先史時代から食用に供され、その証拠は貝塚などに現れている。現在でもあまり魚食を好まない欧米人にも、カキなどの貝類は古くから好まれている。日本においては食用貝の範囲は広く、二枚貝類、巻き貝類はいうに及ばず、地方的にはヒザラガイ類でさえ食用に供されている。
産額の高いものは、二枚貝ではマガキ、スミノエガキ、ホタテガイ、アサリ、ハマグリ、ヤマトシジミなどであるが、地方的にはアケガイ、イソハマグリ、エゾイシカゲガイなど多数の種が利用されている。巻き貝ではアワビ類、サザエのほか、バイまたはツブと総称されるエゾバイ類、エゾボラ類の諸種のほか、シッタカと総称されるバテイラ、クボガイ類のようなもともと地方的なものも市場に現れるようになった。さらに近年では、韓国、中国、台湾のみならず、東南アジア、南北アメリカなどからも、従来日本では利用されなかったアワビモドキやアメリカナミガイなどの諸種が輸入され、利用されている。
[奥谷喬司]