養い親・養い子(読み)やしないおややしないご

日本大百科全書(ニッポニカ) 「養い親・養い子」の意味・わかりやすい解説

養い親・養い子
やしないおややしないご

民俗学では、子供の無事な成育を願って結ぶ仮の親子関係をいう。生まれた子が弱くて育ちの悪いとき、逆に何人も子をよく育て上げた人を親に見立て、呪術(じゅじゅつ)的な親子成りをする習俗はきわめて広い。その仮の親子を南九州や沖縄では養い親・養い子とよぶ。鹿児島県では行商の塩売りをヤシネゴオヤに迎えるとよく育つといわれた。しかし実際に養育にあたるわけではなく、正月・盆に親子の挨拶(あいさつ)を交わすだけであった。養子といえば家の跡取りとして成人男子を求める婿養子をさすことが多いが、相続を目的とせぬ養子も各地に少なくなかった。実子はあっても別に幼い子を引き取って養育し、仕事を教え込んで働かせ、やがて結婚させ分家させるといったものである。この種の貰(もら)い子養子には養子縁組の届け出をせず、同居人の扱いが通例であったが、待遇は実子とほとんど変わらなかった。呪術的な親子を養い親・養い子とよんだのも、このような貰い子養子があったからといわれる。

 なお、法律上の養親・養子の親子関係については、項目「養子」「婿養子」「親権」を参照のこと。

竹田 旦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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