日本大百科全書(ニッポニカ) 「駱駝祥子」の意味・わかりやすい解説
駱駝祥子
ろーとーしあんつ
中国の作家老舎(ろうしゃ)の長編小説。1937年作。「駱駝(らくだ)」とあだ名された人力車夫祥子を主人公とする。祥子は車宿の主人となることを夢みて働く農村出の正直一途(いちず)の青年だったが、努力のすえ前途に希望をみいだしかけては不幸にみまわれ、それが重なるうち、ついには無気力そのものの廃人に成り下がる。こうした彼の一生を通じて、作者は、古都北京(ペキン)の最底辺に生きる人々の姿を描き出し、あわせて、彼らを死へ追いやる社会の仕組みを告発している。なお、新中国成立後、作者は主人公の悲惨な末路を描いた末尾の部分を削除した改訂版を出し、主人公の立ち直りを暗示した。
[立間祥介]
『立間祥介訳『駱駝祥子』(岩波文庫)』