改訂新版 世界大百科事典 「鯨蠟」の意味・わかりやすい解説
鯨蠟 (げいろう)
spermaceti
マッコウクジラなどのハ(歯)クジラ類の頭部の貯油組織から得た油を冷却し,マッコウ鯨油を分離後,析出した固形分。アルカリ液と混合,煮沸して精製すると雪白色無臭の蠟状の塊となる。融点40~50℃。主成分はパルミチン酸セチルエステルC15H31CO2C16H33で,ほかに少量の脂肪酸(ラウリン酸,ミリスチン酸など)とアルコール(ステアリルアルコールなど)とのエステル,グリセリドを含む。軟膏や化粧クリームの硬度調整のための基剤などに用いられた。エステルをケン化して得られるアルコールはセチルアルコールを主成分とし,同様の用途に用いられたが,資源であるマッコウクジラの減少,商業用捕鯨の禁止から工業的意味は失われた。
執筆者:内田 安三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報