黄金の胎子(読み)おうごんのたいし

日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄金の胎子」の意味・わかりやすい解説

黄金の胎子
おうごんのたいし

古代インドにおける万有の始原であり、またいっさいの生命の根元とされた創造の原理。造物主プラジャーパティの別名ともされる。『リグ・ベーダ』の創造神話によれば太古の宇宙は茫洋(ぼうよう)たる原水であったが、そのなかに黄金の胎子ははらまれた。それが生まれると同時に万有の唯一の主宰者となって天地を安立し、万物に生命を与えた。そして神々も彼の命令に従ったといわれる。後世の『マヌ法典』などでは「黄金の卵」とよばれるようになり、この卵のなかに造物主梵天(ぼんてん)が自ら生じて満1年をそのなかで過ごしたのち、その卵を二分した。彼はこの黄金の卵殻より天と地を創造したが、その中間は空界、八方処、および水の永遠のよりどころとなったといわれる。

[原 實]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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