日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒人大学」の意味・わかりやすい解説
黒人大学
こくじんだいがく
negro college
おもにアメリカ合衆国南部において、黒人の高等教育のために南北戦争(1861~65)以後創設された大学で、現在もアメリカ国内に約100校がある。最初の黒人大学は、南北戦争以前に自由黒人を対象として北部でつくられた(リンカーン大学など)が、もっとも急速に増加したのは南北戦争後の30年間、南部においてであった。今日有名な大学としては、フィスク大学、ハワード大学、ハンプトン大学、タスキーギ大学など。その多くは、解放民局担当将軍により設立され、アメリカ伝道教会の援助とロックフェラー、モルガンなど北部の博愛主義的大資本家の資金によって支えられてきた。多くの黒人運動指導者がこれらの大学から育っている。しかし黒人大学の存在は、ある意味で人種差別社会の産物であり、したがって近年人種統合が進み、一般大学への黒人の進出が始まると、黒人大学の独占的な黒人エリート養成機関としての機能は解消され始めている。
[上杉 忍]
『青柳清孝著『黒人大学留学記――テネシー州の町にて』(1977・中央公論社)』