黒人演劇(読み)こくじんえんげき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒人演劇」の意味・わかりやすい解説

黒人演劇
こくじんえんげき

アメリカ演劇において劇中黒人が登場することは 18世紀からすでにあったが,おしなべて類型的役柄で,白人によって演じられていた。 19世紀になるとすぐれた黒人俳優も現れるが,活躍の場は主としてヨーロッパであった。しかし南北戦争後ミンストレル・ショーに進出するようになり,世紀末には黒人ミュージカルが人気を博した。 20世紀に入ると,E.オニールらが黒人を生身の人間として主人公に据えた作品を発表し,その上演を通して P.ロブソンらの名優が登場する。 1930年代には,連邦演劇計画の事業を通じて黒人演劇も活発化し,R.ライト原作の『アメリカの息子』 (1941) が上演されたりした。第2次世界大戦後は黒人問題に対する意識も徐々に高まり,L.ハンズベリーの『日なたの乾しぶどう』 (59) は黒人劇作家によるブロードウェー最初の成功作となった。 60年代,公民権運動の盛上がりと呼応するように多彩な才能が開花し,J.A.ボールドウィン,L.ジョーンズといった作家,ニグロ・アンサンブル・カンパニーなどの劇団がアメリカ演劇の一翼をになうようになった。 70年代に運動としては一時衰退したが,80年代からは A.ウィルソン,G.ウルフらの,黒人演劇にとどまらずアメリカ演劇を代表するような黒人作家が活躍している。

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