精選版 日本国語大辞典 「一時」の意味・読み・例文・類語
いち‐じ【一時】
〘名〙
① 少しの間。暫時。ひととき。いっし。
※本朝無題詩(1162‐64頃)八・秋日長楽寺即事〈藤原敦光〉「雲色泉声尋二洛東一。一時賞翫感相通」
※太平記(14C後)九「諸卒心を一にして、一時(イチジ)が間に責め落とす可し」 〔荀子‐正名〕
② その時だけ。かりそめ。
※西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉九「アノときゃア一時(イチジ)のしゃれをやったのだ」
③ ある時。かつて。〔法華経‐序品〕
④ その当時。同時代。当代。
※性霊集‐序(835頃)「前御史大夫泉州別駕馬摠一時大才也」 〔後漢書‐班超梁瑾伝論〕
⑤ 同時。また、一度。→一時に。
⑥ 時刻の名称の一つ。午前と午後とある。明治初期には「第」をつけ、「時」ではなく「字」を用いることが多かった。また、一時間をいう場合もある。
※公議所日誌‐六・明治二年(1869)四月「第十二字より第一号改正議案の可否を決し、第一字より里数改定の評論を、且読み且論じ、〈略〉第四字一同退散せり」
※航西日乗(1881‐84)〈成島柳北〉二月一日「午後一時米人カッセイ氏及び同寓三子と共にカタコンブ(即ち地下の旧墓地)を観る」
いっ‐とき【一時】
〘名〙
① 昔の時間区分で、一日の十二分の一。今のおおよそ二時間。奈良・平安時代の定時法では二時間、鎌倉時代以降の不定時法では季節により、また昼夜によって相違する。
※平家(13C前)一二「よりあひよりのき一時(トキ)(高良本ルビ)ばかりぞたたかふたる」
② 短い時間。ちょっとの間。暫時。
※玉塵抄(1563)九「朝廷になうては一ときもかなうまい人と云たぞ」
③ (「に」を伴って、副詞的に用いる) 同時。いちじ。
※滑稽本・八笑人(1820‐49)四「と、いふをきっかけに、皆一時(イットキ)に〈略〉手当り次第にたたきたってはやす」
ひと‐とき【一時】
〘名〙
① しばらくの間。ほんのわずかの間。暫時。瞬時。いっとき。
② あるとき。そのとき。
③ 昔の時間区分で、一日の十二分の一。今の約二時間。いっとき。
いっ‐し【一時】
〘名〙 ごく短い時間。わずかの間。たちまち。いちじ。
※ロドリゲス日本大文典(1604‐08)「メイヨウ ヲチヤスシ、アキ ixxi(イッシ)」
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