日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒血症」の意味・わかりやすい解説
黒血症
こっけつしょう
遺伝性黒血症ともよばれ、生まれつき黒みがかった皮膚、粘膜で、血液は赤みが少なく黒っぽい色をしている。岩手県に古くから血黒、黒子などとよばれた病気があり、これはその後、ヘモグロビンの分子レベルでの異常によってメトヘモグロビンをつくってしまう病的ヘモグロビンのためであることが判明した。メトヘモグロビンはガス交換機能が欠けているため、血液や皮膚などが黒みがかる。岩手県で発見されたのでヘモグロビンM岩手とよばれる。わが国をはじめ世界各国にこのような異常血色素が発見され、その土地の名前がつけられている。通常、患者のヘモグロビンの約30%が異常で、紫藍(しらん)症(チアノーゼ)を呈するが、強い全身的な症状を呈することはほとんどない。しかし、重篤なものは生存できない。そのほか、生まれつき紫藍症を伴う先天性メトヘモグロビン血症として、メトヘモグロビン還元酵素の欠乏によるものがある。また、アニリン、フェナセチン、ニトロベンゾールなどの薬品による中毒性メトヘモグロビン血症も、黒血症の一つである。
[伊藤健次郎]