日本大百科全書(ニッポニカ) 「黒鉛化」の意味・わかりやすい解説
黒鉛化
こくえんか
graphitization
非黒鉛質炭素(無定形炭素)が黒鉛結晶に変わること。炭素の結晶形のなかで、ダイヤモンドは高圧下での安定相であり、常圧下では黒鉛が安定相である。したがって常圧のもとでの無定形炭素の熱処理をすれば黒鉛結晶となる。この過程を黒鉛化とよぶ。炭素材料は2000℃以上で熱処理すると比較的容易に黒鉛化する石油コークス、ピッチコークスなどと、黒鉛化の困難な木炭、砂糖炭、セルロース炭などの二つのグループに分けられる。前者を易黒鉛化性炭素、後者を難黒鉛化性炭素という。易黒鉛化性炭素は有機物から炭素に変わる350~500℃の温度でいったん液相を経由するのに対して、難黒鉛化性炭素は原料の有機物が一貫して固相下で炭化したものである。熱処理による無定形炭素の結晶化は広い温度にわたって行われ、明確な転移温度にあたるものはない。黒鉛化の進行とともに結晶子がしだいに大きく成長していくとともに、真比重や熱・電気伝導度も大きくなる。19世紀末、アメリカのE・G・アチソンが高温電気炉を用いて初めて人造黒鉛の工業的製造に成功した(1895)。人造黒鉛電極は製鋼用として今日広く使われている。
[真田雄三]