日本大百科全書(ニッポニカ) 「石油コークス」の意味・わかりやすい解説
石油コークス
せきゆこーくす
petroleum coke
石油の減圧または常圧蒸留残油を各種のコーキング法により490~640℃で熱分解すると、ナフサ、軽油などとともに得られるコークス。このようにして得られたものは生(なま)コークスとよばれ、比重約1.7の多孔質の固体であり、主成分は炭素であるが、揮発成分を約10%含む。生コークスは、燃料、鋳物用コークス材、製鉄用、カーバイド製造原料などに用いられる。生コークスを約1300℃で焼成し、揮発成分を除去したものは煆焼(かしょう)コークスとよばれ、比重は約2で、約99%が炭素であり、アルミニウム精錬用炭素電極、人造黒鉛の原料などに使われる。生コークス、煆焼コークスとも含有する硫黄(いおう)分、灰分の量が問題になる場合が多く、原油の選択や原料残油の脱硫、脱金属を行わなければならない場合が多い。1960年代以降のアルミニウムの需要増大に伴い、炭素電極の需要が増している。
[難波征太郎]