無定形炭素(読み)ムテイケイタンソ(その他表記)amorphous carbon

デジタル大辞泉 「無定形炭素」の意味・読み・例文・類語

むていけい‐たんそ【無定形炭素】

炭素同素体の一。はっきりした結晶状態を示さない炭素。木炭・すす・コークスなど。

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精選版 日本国語大辞典 「無定形炭素」の意味・読み・例文・類語

むていけい‐たんそ【無定形炭素】

  1. 〘 名詞 〙 炭素の同素体のうち、はっきりした結晶状態を示さないものの総称。木炭、カーボンブラックなど、ダイヤモンド石墨以外の炭素がこれに属する。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無定形炭素」の意味・わかりやすい解説

無定形炭素
むていけいたんそ
amorphous carbon

炭素の同素体のうち、はっきりした結晶状態を示さないもの。ダイヤモンド、石墨(せきぼく)(黒鉛)以外の天然に産する炭素およびコークス、木炭、獣炭、煤(すす)などがこれにあたる。厳密には無定形でなく黒鉛の微細結晶の集合体であり、またフラーレンカーボンナノチューブなどが含まれることもある。霧状の油またはアセチレンなどを1300℃以上で熱分解させると、カーボンブラックと総称される炭素材料が得られる。原料や熱分解の方法によって粒子の大きさや構造が異なるが、平均直径20~30Å(Åはオングストローム、10-10メートル)の黒鉛様平面分子が、層状または鎖状に複雑に集まったものといわれている。多少不純物を含むことが多いが、普通、黒色の粒状または粉末固体。微結晶の集まりなので表面積が広く、気体、液体、塩類などをよく吸着する。黒鉛より化学的反応性は高い。高温に熱すると徐々に黒鉛化する。化学的処理によりとくに吸着能を高めた活性炭は、食品類の脱色脱臭、医薬品の精製、不純物の除去、触媒などに広く用いられる。カーボンブラックは、自動車タイヤなどゴムの増強剤として大量に用いられるほか塗料印刷インキ、顔料などに用いられる。電極坩堝(るつぼ)などに用いられるものも無定形炭素である。

[守永健一・中原勝儼]

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化学辞典 第2版 「無定形炭素」の解説

無定形炭素
ムテイケイタンソ
amorphous carbon

炭素の同素体の一つ.はっきりした結晶状態を示さないものの総称.黒鉛,ダイヤモンド以外の自然界の炭素,木炭,獣炭,すす,ガスカーボンなどが含まれる.IUPACの定義に従えば,原子配置が短距離規則性のみで長距離規則性をもたず,原子間距離,結合角にグラファイト格子,ダイヤモンド格子からのずれがあるものとされるので,カーボン,ナノチューブやフラーレンは含まれない.完全に無定形ではなく,ランダムに配列した黒鉛の微小結晶の集合体である.製法,そのほかによっても結晶の大きさが異なる.不純物を含むことも多い.同素体のなかではもっとも安定度が劣り,発火温度も約350 ℃ で一番低い.黒色不透明で,密度も黒鉛より小さい.表面積が大きく吸着剤として重要である.微粒子のカーボンブラックはゴム充填剤,印刷用インキ,顔料などに用いられる.

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百科事典マイペディア 「無定形炭素」の意味・わかりやすい解説

無定形炭素【むていけいたんそ】

炭素の同素体のうちダイヤモンド,石墨以外のものをいう。はっきりした結晶状態を示さないのでこのように呼ばれるが,実際には細かい石墨結晶の集まりである。コークス木炭カーボンブラック,獣炭など。通常,黒色不透明の粉末で,吸着作用が強く,比重は石墨より小さい。

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世界大百科事典(旧版)内の無定形炭素の言及

【炭素】より

…非金属元素としては硫黄とともに最も古く紀元前から知られている元素の一つである。無定形炭素のすす(煤)や炭は古代から知られており,ダイヤモンドは旧約聖書中にその記載がある。ただしダイヤモンドが炭素からなることがわかったのは,1772年A.L.ラボアジエがダイヤモンドの燃焼によって二酸化炭素のみを生ずることを見いだし,96年イギリスのテナントSmithson Tennant(1761‐1815)がダイヤモンドが炭素のみからなることを明らかにして以来である。…

※「無定形炭素」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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