ならたけ病(読み)ならたけびょう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ならたけ病」の意味・わかりやすい解説

ならたけ病
ならたけびょう

林木や果樹の根系および幹の地際部が侵され、地上部全体がしおれて枯れる病気。病原菌ナラタケArmillaria mellea (Vahl:Fr.) Kummerというマツタケ目キシメジ科のキノコである。森林生息性で、切り株や残根に繁殖し、土壌中に黒色ひも状の根状菌糸束を伸ばし、生樹の根に接触すると侵入して病気をおこす。カラマツサクラでは水の停滞しやすい場所で、ヒノキやクリでは逆に乾きやすい土壌で集団的に発生する。緑地の貴重木では防菌処理を加味した外科手術による治療法が確立したが、造林地での防除はきわめて困難である。なお、世界で1種とされていたナラタケには、性的和合性(交配性)など、おのおの遺伝的に隔離された多くの生物学的種の存在が明らかとなった。

[小林享夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内のならたけ病の言及

【ナラタケ】より

…全世界に分布する最もふつうのキノコの1種で,各地で食用にされるが,また林木,コーヒー,チャ,ゴム,果樹,庭木などの根を侵して木を枯らす病原菌としても広く知られる。この病気をナラタケ病という。キノコは立木,枯れた木の根もと,また切株や倒木などに束になって生え,多数群生する。…

※「ならたけ病」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」