雲陽誌(読み)うんようし

日本歴史地名大系 「雲陽誌」の解説

雲陽誌
うんようし

黒沢長尚著

成立 享保二年

写本 国立国会図書館・島根県立図書館ほか

解説 出雲地方史研究の地誌として高い評価をもつ書。松江藩主松平家三代綱近の命で出雲国中の調査が始まったが、綱近の死去によって一時中断し、五代藩主宣維が黒沢長尚に命じて編纂を完成させた。著者を長尚の父弘忠(石斎)とする誤りもあるが、これは弘忠が同じ地誌「懐橘談」の著者であることによると思われる。記述は出雲国一〇郡五四五町村を網羅する。島根郡松江城下から始まり、各郡一町村ごとに神社・仏閣・古跡・名所古戦場・古城跡・堂宇などに至るまでその由来・伝承が詳述され、往時を知るうえで貴重な史料とされる。写本はかなり存在しているが、巻数は一定でない。

活字本 「大日本地誌大系」42、本書は明治四三年に島根県が二冊本で刊行したものを底本に、各種写本との校訂を行って刊行。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

世界大百科事典(旧版)内の雲陽誌の言及

【出雲国】より

…出雲を代表する物産は木綿と鉄であったが,宝暦年間の《雲陽大数録》には,十六島(うつぷるい)海苔,真野梨,大庭(おおば)梨,艫島鰤(ぶり),松江鱸魚(すずき),松江蓴菜(じゆんさい),渡橋加儀茶,日御碕ワカメ,神西湖鯉鮒,吉田香茸,平田蕪(かぶ),八川草蕨,熊野茶,宍道湖鰻(うなぎ),中海雲丹(うに),岡本牛蒡(ごぼう),薦田芹(せり),野白(のしら)紙,一成蛤(はまぐり),片海海苔,関小鯛,大井芹,矢尾煙草などを記している。江戸期の地誌としては,藩儒の黒沢石斎による《懐橘談》(前編1653,後編1661)と,1717年(享保2)に藩主が命じて作らせた黒沢長顕と斎藤豊仙による《雲陽誌》がある。同書には出雲国10郡545ヵ町村の詳細が記してある。…

※「雲陽誌」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

選挙公営

国または地方公共団体が個々の候補者の選挙費用の一部または全額を負担すること。選挙に金がかかりすぎ,政治腐敗の原因になっていることや,候補者の個人的な財力によって選挙に不公平が生じないようにという目的で...

選挙公営の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android