顧みれば(読み)かえりみれば(英語表記)Looking Backward,or 2000-1887

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「顧みれば」の意味・わかりやすい解説

顧みれば
かえりみれば
Looking Backward,or 2000-1887

アメリカの作家エドワード・ベラミーのユートピア小説。 1888年刊。 1887年に眠りにつき,2000年に目をさましたボストン上流社会に属するジュリアン・ウェストが,未来の理想国家を見聞することによって階級意識を克服し,逆に未来の視点から 19世紀末の不安な社会を批判して,民衆主体による社会主義的世界を夢みた物語。その進化過程の前提として人間意識の覚醒を呼びかけ,改革を改宗,再生と同義に用いた点で,これは伝統的な保守主義の書であり,キリスト教的な福音主義の書ともみられたが,非暴力による社会進化を説いた点で,非常な反響を呼び,日本でも 1904年平民社から翻訳が出た。

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世界大百科事典(旧版)内の顧みればの言及

【ベラミー】より

…法律を学んだがジャーナリズムに入り,一方ロマンティックな小説を書く。産業が国有化され国民の豊かな生活を保障するユートピア小説《顧みれば》(1888)は,社会主義よりもナショナリズムを強調したためアメリカ人の共感を得,各地にその理想を目ざすナショナリスト・クラブの誕生をみ,日本にも明治年間に紹介された。続編《平等》(1897)は前作に対する疑問に答えたものである。…

【ユートピア】より

…最も楽観的なものは,世紀の後半に続出し,技術と社会機構の発展によって現在の延長上に構想され,貧困,過重労働,凶作,不況から免れた豊かな社会が近い未来に描かれた。E.ベラミー《顧みれば》(1888),T.ヘルツカ《自由の地》(1890)は,ことにアメリカで熱狂をもってむかえられた。 第2は,ロマン主義の影響のもとに成立したものであり,第1とは逆に高度な技術文明を嫌悪し,前産業化社会を背景として調和と協働,自然への回帰と人間性の回復を基調とする理想社会をもとめた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」