山川 日本史小辞典 改訂新版 「10月事件」の解説
10月事件
じゅうがつじけん
錦旗革命とも。1931年(昭和6)10月の陸軍参謀本部の将校を中心としたクーデタ未遂事件。「クーデターにより政権を奪取して独裁制を布き政治変革を行う」ことを目的に,橋本欣五郎中佐ら参謀本部勤務の幕僚,隊付の青年将校と大川周明・井上日召・橘孝三郎の一党が参画した。橋本は関東軍とも連絡し,軍務局長・次官ら軍上層部の黙認もえていた。在京師団からの一部兵力の動員,陸軍戸山学校生の尉官たちの抜刀隊,航空機(13機)の参加も予定され,若槻首相・閣僚の斬殺,警視庁の占拠などの後,荒木貞夫教育総監部本部長を首相として目的を達成するとしていた。しかし10月16日の夜,荒木は橋本・長(ちょう)勇少佐ら中心人物を説得,事件は未発に終わった。以来軍内では幕僚と青年将校が,民間では大川と西田税(みつぎ)・北一輝が相互不信となり対立する。橋本ら13人は軽い処罰をうけたが,このなかから太平洋戦争時の軍司令官や師団長が,青年将校から2・26事件の参加者が出ている。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報