三電子結合(読み)サンデンシケツゴウ

化学辞典 第2版 「三電子結合」の解説

三電子結合
サンデンシケツゴウ
three-electron bond

3個の電子によって形成されている結合をいう.ヘリウム分子イオン He2 には,3個の電子が結合に関与している.この結合の形成は,次の二つの構造ⅠとⅡの共鳴によるとして説明される.

a原子核に2個,b原子核に1個の1s電子が属している構造Ⅰと,a原子核に1個,b原子核に2個の1s電子が属す構造Ⅱとの間の共鳴により,系のエネルギー安定化する.すなわち,aとbの原子核の間に結合が形成されることになる.また,分子軌道法の考えによっても説明することができる.両原子核の1s軌道の一次結合によって,安定な結合性分子軌道と不安定な反結合性分子軌道ができる.2個の電子が前者の軌道に,1個の電子が後者の軌道に入るが,前者のほうが後者の軌道よりも1個余分に電子を収容しているので,系全体としてのエネルギーは安定になるから結合の形成は可能となる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の三電子結合の言及

【化学結合】より

…分子の中でそれを構成する原子を互いに結びつけ,分子の形を維持しているのが化学結合である。希ガス元素(ヘリウムHe,ネオンNe,アルゴンArなど)の原子を除くと,一般の元素の原子は常温・常圧では単独で存在するよりも,他の同種または異種の原子いくつかとかなり強い力で引き合って集合して,分子を形成したほうがエネルギーが低くなり安定である。このように分子の中で強い力を及ぼし合っている原子の間には化学結合があるという。…

※「三電子結合」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」