ABC予想(読み)えーびーしーよそう

知恵蔵の解説

ABC予想

a+b=cが成り立つ自然数(正の整数)a、b、cにおいて、積abcの素因数に関する数論上の予想。1985年に欧州の数学者らが提唱したが、証明も反例も見つかっておらず、整数の方程式の解析における「最も重要な未解決の問題」といわれる。2012年8月、京都大学数理解析研究所の望月新一教授により、同研究所ホームページに掲載された4本の論文が、この証明に成功したと話題になっている。
abc予想では、互いに素(1以外に共通の約数をもたない)である3つの自然数(正の整数)の組(a、b、c)について考える。a、bの和がcである(a+b=cを満たす)とき、積abcの互いに異なる素因数の積をdとする。任意の実数κ> 1のとき、dをκ乗(累乗)した積は、まれにcよりも小さくなる。すなわち、そのような数の組(a、b、c)は有限個だけしか存在しないという予想だ。例えば3つの数が(2、7、9)の組のときは、2+7=9を満たすが、d=2×7×3=42だからκ>1の範囲で累乗すると、その積はcよりも大きくなってしまう。このような数の組が多いが、(1、8、9)などの組では、1+8=9を満たし、かつd=2×3=6となる。このd=6をκ=1.2として累乗した積は9よりも小さいので「まれに」あるケースということになる。現在のところ電子計算機を使ってκ>1.6となる数の組、すなわち任意の実数を1.6としたときの反例は数個だけ見つけられている。しかしκが2以上となるようなものは見つかっていない。abc予想にはいくつかの表現があり、κ=2(もしくは2以上)となるような数の組は存在しない、もしくは反例のないある実数が存在する、あるいはκ>1となるような自然数の組は限られた個数しか存在しない、というような内容になる。かつての有名な未解決問題としては,17世紀中葉から証明の試みが続けられていたフェルマーの最終定理がある。この証明に近年成功した数学者アンドリュー・ワイルズも、abc予想の解明に取り組んでいた。abc予想が証明されればフェルマーの最終定理に非常に簡素な別証明が得られる。他の様々な未解決の問題についての解明にもつながる。また、望月教授が証明に用いた数学的手法「宇宙際タイヒミューラー理論」は、今後の整数論の研究にとって大きな手掛かりとなる。この手法が斬新なため、公開した論文についての批判や指摘を受けて修正などを進め、完成に近づいていくと考えられる。論文が認められるには、誤りがないかを審査する査読が求められるが、この論文については数年間を要すると見られている。

(金谷俊秀  ライター / 2012年)

abc予想

a+b=cが成り立つ自然数(正の整数)a、b、cにおいて、積abcの素因数に関する数論上の予想。1985年に欧州の数学者らが提唱したが、証明も反例も見つかっておらず、整数の方程式の解析における「最も重要な未解決の問題」といわれる。2012年8月、京都大学数理解析研究所の望月新一教授により、同研究所ホームページに掲載された4本の論文が、この証明に成功したと話題になっている。
abc予想では、互いに素(1以外に共通の約数をもたない)である3つの自然数(正の整数)の組(a、b、c)について考える。a、bの和がcである(a+b=cを満たす)とき、積abcの互いに異なる素因数の積をdとする。任意の実数κ> 1のとき、dをκ乗(累乗)した積は、まれにcよりも小さくなる。すなわち、そのような数の組(a、b、c)は有限個だけしか存在しないという予想だ。例えば3つの数が(2、7、9)の組のときは、2+7=9を満たすが、d=2×7×3=42だからκ>1の範囲で累乗すると、その積はcよりも大きくなってしまう。このような数の組が多いが、(1、8、9)などの組では、1+8=9を満たし、かつd=2×3=6となる。このd=6をκ=1.2として累乗した積は9よりも小さいので「まれに」あるケースということになる。現在のところ電子計算機を使ってκ>1.6となる数の組、すなわち任意の実数を1.6としたときの反例は数個だけ見つけられている。しかしκが2以上となるようなものは見つかっていない。abc予想にはいくつかの表現があり、κ=2(もしくは2以上)となるような数の組は存在しない、もしくは反例のないある実数が存在する、あるいはκ>1となるような自然数の組は限られた個数しか存在しない、というような内容になる。かつての有名な未解決問題としては,17世紀中葉から証明の試みが続けられていたフェルマーの最終定理がある。この証明に近年成功した数学者アンドリュー・ワイルズも、abc予想の解明に取り組んでいた。abc予想が証明されればフェルマーの最終定理に非常に簡素な別証明が得られる。他の様々な未解決の問題についての解明にもつながる。また、望月教授が証明に用いた数学的手法「宇宙際タイヒミューラー理論」は、今後の整数論の研究にとって大きな手掛かりとなる。この手法が斬新なため、公開した論文についての批判や指摘を受けて修正などを進め、完成に近づいていくと考えられる。論文が認められるには、誤りがないかを審査する査読が求められるが、この論文については数年間を要すると見られている。

(金谷俊秀  ライター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

朝日新聞掲載「キーワード」の解説

ABC予想

1985年に、D・マッサーとJ・オステルレにより提示された整数論の未解決問題。整数aと整数bの和である「c」と、三つの数a、b、cそれぞれの素因数の積との間に生じる特別な関係を示している。積と和の関係は未解明の部分も多く、さらに不等式で示されていることが、解決を一層難しくさせてきた。整数論の様々な問題の根幹に関わる重要な予想と位置づけられている。

(2017-12-16 朝日新聞 朝刊 1総合)

出典 朝日新聞掲載「キーワード」朝日新聞掲載「キーワード」について 情報

デジタル大辞泉の解説

エービーシー‐よそう〔‐ヨサウ〕【ABC予想】

整数論における未解決の難題の一。互いに素自然数の組abcについて、abcが成り立つとき、cK・{rad(abc)}1+εという不等式を満たすabcの組が無限に存在するというもの。ここでKεによって決まる定数でε>0、K≧1を満たし、radは括弧内のそれぞれの数の素因数の積を表す。平成24年(2012)、数学者の望月新一が独自に宇宙際(さい)タイヒミュラー理論を構築し、同予想を証明したという論文を発表。論文の理解者が少なく、査読に時間を要し、平成29年(2017)に数学の専門誌への掲載が受理された。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

関連語をあわせて調べる

今日のキーワード

新華社

中華人民共和国の国営通信社。新華通訊社が正式名称。 1931年延安で創立され,48年北京に移り,現在は政府国務院新聞総署の管轄下にある。特に文化大革命以後は重要度が高まり,党と政府の発表はここを通じて...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

ABC予想の関連情報