L-システイン(読み)えるしすていん(英語表記)L-Cysteine

知恵蔵 「L-システイン」の解説

L-システイン

非必須アミノ酸の一つで、体内ではメチオニンから合成される。皮膚、髪、爪などに含まれるタンパク質ケラチンの構成成分となり、黒色メラニンの発生を抑制したり、アルコールを分解してできるアセトアルデヒドと反応して無毒化したりといった働きがある。そのため、肌や髪のトラブル改善、美白、二日酔い予防などの目的で、錠剤型の健康食品として一般に広く販売されている。
L-システインは小麦胚芽(はいが)、ブロッコリーニンニクといった食品に少量含まれているが、必要量を全て食事から直接摂取することは難しく、また体内合成できるので必ずしも食事から摂取する必要性はない。L-システインを体内合成する素となるメチオニンを含む食品(例えば大豆鶏肉、ホウレン草、カツオイワシなど)を補うことでL-システインの合成量を増やすことができる。
2015年3月に東北大学大学院医学系研究科が、L-システインを飲酒前に摂取することで胃がんのリスクを減らせる可能性があることをオンラインの医学サイトに発表して話題になった。内容は、アセトアルデヒドを無毒な酢酸に代謝する酵素ALDH2が不活性なヒトがL-システインを飲酒前に摂取したところ、摂取しなかった場合と比べて飲酒後の胃内アセトアルデヒド濃度が60%低下したというもの。ALDH2活性のヒトの場合でL-システイン摂取後のアセトアルデヒド濃度の低下率が67%であったことから、従来、補酵素的に機能すると考えられていたL-システインが、アセトアルデヒドに直接作用している可能性を強く示唆する結果となった。アセトアルデヒドは胃がんや食道がんリスク因子の一つとされており、東北大学の研究チームは、飲酒後の濃度をL-システインによって下げることで胃がんを予防する効果があるのではないかとしている。

(石川れい子 ライター/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

化学辞典 第2版 「L-システイン」の解説

L-システイン
システイン
L-cysteine

2-amino-3-mercaptopropionic acid.C3H7NO2S(121.06).略号CysまたはC.含硫アミノ酸の一つ.タンパク質構成アミノ酸として広く分布しているが,シスチンの形で含まれることが多い.しかし,酵素分子中でチオール基が活性中心としてはたらくこともある.シスチンから液体アンモニア中ナトリウムで還元すると得られる.天然のR(L)形は分解点178 ℃.-16.5°(水).pK1 1.71,pK2 8.33,pK3 10.78.水,エタノール,氷酢酸アンモニア水に易溶,ほかの有機溶媒に難溶.微量の金属の存在下ではとくに不安定で,空気酸化されてシスチンにかわる.解毒剤や食用補剤に用いられる.LD50 1890 mg/kg(ラット経口).[CAS 52-90-4]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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