シスチン(読み)しすちん(英語表記)cystine

翻訳|cystine

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シスチン」の意味・わかりやすい解説

シスチン
しすちん
cystine

システインの2分子が酸化されて結合した含硫アミノ酸一種。立体構造上、互いに対称的なD形とL形があるが、タンパク質中にみいだされるものは、すべてL形である。正六角板状晶で、光学活性をもつ。水に溶けにくく、弱酸や弱アルカリには溶ける。タンパク質構成アミノ酸の一種で、とくに毛髪、爪(つめ)、角(つの)などのケラチンには多量含まれており、酸加水分解液から直接沈殿として分離できる。シスチン尿症(遺伝病)患者の尿中にはシスチン結晶が含まれる。種々の還元試薬により容易に還元されてシステインとなる性質は、生体内酸化還元の過程で重要な役割を果たしている。高等植物や酵母には、還元型のニコチン酸アミドアデニンジヌクレオチド(NADH)によるシスチンのシステインへの還元系が存在する。ジスルフィド結合(S‐S結合)によってタンパク質のポリペプチド鎖を折り畳んだり連結させて高次構造を保持し、酵素あるいはホルモンの活性にもシスチンが関与していることが多い。

景山 眞・入江伸吉]

栄養

シスチンは必須(ひっす)アミノ酸であるメチオニン作用をシステインを経て一部代替できるので、栄養上はメチオニン+シスチン量が問題とされる。すなわち、シスチンは広く食品タンパク質に含まれているが、食品やアミノ酸製剤などの栄養効果をアミノ酸組成から検討する場合には、含硫アミノ酸としてメチオニンと同等に扱われている。

[宮崎基嘉]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シスチン」の意味・わかりやすい解説

シスチン
cystine

硫黄を含むアミノ酸の一種。化学式 (-SCH2CH(NH2)COOH)2 。古くからシスチン尿といわれる代謝機能障害患者の尿結石の主成分として知られているアミノ酸。毛髪や角などに存在する蛋白質のケラチンに特に多量 (10~13%) に含まれているが,一般の蛋白質にも少量は含まれて,いわゆ-S-S-結合の主体をなしている。正六角板状晶。毛髪の酸加水分解によって容易に得られる。水に難溶である。

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