リガーゼ(英語表記)ligase

翻訳|ligase

改訂新版 世界大百科事典 「リガーゼ」の意味・わかりやすい解説

リガーゼ
ligase

合成酵素,シンセターゼsynthetaseともいう。大部分ATP(アデノシン三リン酸),特殊な例ではGTPグアノシン三リン酸),NAD(ニコチン酸アミドジヌクレオチド)などのリン酸化合物の分解と共役して,2個の分子の間に共有結合を形成させる反応を触媒する酵素総称。反応の結果として生成する結合の種類は,C-O結合(エステル),C-S結合(チオエステル),C-N結合(アミド,ペプチドなど),C-C結合,P-O結合(ホスホジエステル)など多岐にわたる。脂肪酸酸化反応のような,異化的代謝経路に関係する酵素もあるが,多くはアミノ酸,ヌクレオチド,糖,脂肪酸その他の生体構成成分を合成する同化的代謝経路において作用する酵素である。タンパク質生合成におけるアミノ酸の活性化や,DNA複製の過程で短鎖の中間体を結合させる反応など,生体高分子物質の生合成に関与するものもある。いずれの場合にも,反応は基質の一方が,アデニル化,リン酸化,またはピロリン酸化された活性中間体を経由しておこなわれ,ATP分解のエネルギーが反応の駆動力となる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リガーゼ」の意味・わかりやすい解説

リガーゼ
りがーぜ
ligase

アデノシン三リン酸(ATP)などの高エネルギー結合の加水分解により遊離されたエネルギーを利用して2個の分子を結合させる反応を触媒する酵素の総称で、合成酵素またはシンテターゼsynthetaseともいう。酵素分類では6群に属する。この反応の結果として生成する結合には、C‐O結合(アミノアシル転移RNA合成酵素)、C‐S結合(アセチル補酵素A合成酵素など)、C‐N結合(グルタミン合成酵素など)、C‐C結合(ピルビン酸カルボキシル化酵素など)などがあり、この結合の種類によっても細分されている。系統名としてはamino acid : t-RNA ligase (AMP)というように、結合する物質をコロン(:)で結び、その後にリガーゼとつけ、ヌクレオシド三リン酸の分解物(ADP:アデノシン二リン酸やAMP:アデノシン一リン酸など)を括弧(かっこ)に入れて付記する。

 リガーゼは、アミノ酸、ヌクレオチド、脂肪酸などの生体構成成分の合成をはじめ、タンパク質合成の初段階におけるアミノ酸の活性化、核酸塩基の生合成などに重要な役割を果たしている。

[笠井献一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「リガーゼ」の解説

リガーゼ
リガーゼ
ligase

シンテターゼ(合成酵素)ともいう.アデノシン5′-三リン酸(ATP)などの高エネルギーリン酸結合の加水分解に共役して,2個の分子を結合させる反応を触媒するEC 6群の酵素の総称.たとえば,アスパラギン酸アンモニアリガーゼ(アスパラギンシンテターゼ)は,次の反応を触媒する.

   ATP + アスパラギン酸 + NH3

AMP + アスパラギン + 二リン酸   

生成する結合の種類により,
(1)チロシンtRNAリガーゼのようにC-O結合をつくるもの,
(2)アセチルCoAリガーゼのようにC-S結合をつくるもの,
(3)アスパラギン酸アンモニアリガーゼのようにC-N結合をつくるもの,
(4)ピルビン酸カルボキシラーゼのようにC-C結合を生成するもの,
などがある.[CAS 9031-56-5][別用語参照]酵素命名法

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リガーゼ」の意味・わかりやすい解説

リガーゼ
ligase

結合酵素の意で,国際酵素規約の分類法による第6群に属する酵素の総称。高エネルギーリン酸結合の分解に伴って,2個の分子を結合させるもので,一般式はA+B+ATP→A-B+ADP+リン酸 (またはA-B+AMP+ピロリン酸) と書ける。実例としては,シトルリンとアスパラギン酸からのアルギノコハク酸合成,酢酸とコエンザイムAからのアセチルコエンザイムA合成などがある。

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栄養・生化学辞典 「リガーゼ」の解説

リガーゼ

 シンテターゼ,合成酵素ともいう.ATPなどの高エネルギーリン酸結合を利用してC-N,C-C結合などを新たに合成する反応を触媒する酵素.DNA鎖の修復などはこの酵素の一つDNAリガーゼによる.そのため,遺伝子工学にも汎用される.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリガーゼの言及

【組換えDNA】より

…どちらの方法も,特定遺伝子の活性を測定できるよう巧みにくふうされている。DNA断片をプラスミドやウイルスに組み込むためには,制限酵素によるプラスミドDNAの切断と,リガーゼによる遺伝子DNA断片とプラスミドDNAの結合反応を行わせ,その結果組換えDNAが形成する。ある生物種の全DNAを断片化し,プラスミドにそれぞれ組み込ませたものを,遺伝子ライブラリー(図書館)という。…

※「リガーゼ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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