AGIL図式(読み)エージーアイエルずしき

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「AGIL図式」の意味・わかりやすい解説

AGIL図式
エージーアイエルずしき

T.パーソンズの社会体系の構造的・機能的分析と R.F.ベールズの小集団に関する相互作用過程の分析とが結合してできたものである。A (Adaptation)適応,G (Goal attainment)目標達成,I (Integration)統合,L (Latency) 潜在の4つの機能展開の局面を用いて社会体系の均衡,保持を説明する図式。Aは外部的,手段的な機能要件 (たとえば経済) ,Gは外部的,目的的な機能要件 (政治) ,Iは内部的,目的的な機能要件 (→社会統制 ) ,Lは内部的,手段的な機能要件 (価値パターンの維持) を意味している。4つの次元で体系内の各種の行為は時間的に分化し,時間の経過とともに4つの局面のいずれかで優勢,極大化を示す。その極大値をもって各位相の特性とみなすが,この位相は周期的に順次変る。各位相は,AGILの4つの局面であり,ベールズの実験によるとA→G→I→Lの順に位相運動が行われるという。また社会体系の下位体系も上位体系に対して分担しながらみずから同じ運動を行う。このように,社会体系のすべてを記述し,時間の経過における過程を分析できる一般的分析図式であるが,マルクス主義からは,非歴史的な均衡理論であり体制維持の社会学理論であると批判された。

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世界大百科事典(旧版)内のAGIL図式の言及

【社会学】より

…ところで,機能主義社会学の中核である社会システム論の理論的特質は,システムの存続あるいはホメオスタシスの達成のために充足すべき機能的要件の理論を整備したことと,社会的相互作用の安定化にとって規範的要素が不可欠であることが主張されている点である。すなわち,大規模で,持続的で自給自足的な社会的相互作用のシステムをもって社会とみなすこの立場にあっては,システムがその内部矛盾によって機能障害を引き起こした場合も,システムのラディカルな変動を回避するためには,適応(A),目標達成(G),統合(I),パターン維持(L)という四つの機能的要件を充足せねばならぬとされる(AGIL図式)。また,社会システム分析の基本的単位である社会的地位・役割にとって中枢的契機をなすものが社会的規範とされ,社会化や統制においてそれが強調されるのもこの立場の特徴である。…

【パーソンズ】より

…また,パーソナリティ・システムと社会システムの外に文化システムを考えることによって,価値とか理念のような行為の目標が文化要素からくると説明し,〈目標のランダムネス〉に陥る功利主義のジレンマを克服し得るとした。 パーソンズは行為システムの機能的要件として,適応adaptation,目標達成goalattainment,統合integration,潜在的パターンの維持latent pattern maintenanceの四つをあげ,これら四つをそれぞれ第1次的に受け持つサブ・システムをA部門,G部門,I部門,L部門と呼んだ(AGIL図式)。これら4部門のあいだには相互にインプットとアウトプットの交換(境界相互交換)が行われ,それらの交換におけるメディアとして貨幣,権力,影響力,価値コミットメントの四つがあげられる(メディア理論)。…

※「AGIL図式」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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