遺伝情報(読み)いでんじょうほう

精選版 日本国語大辞典 「遺伝情報」の意味・読み・例文・類語

いでん‐じょうほう ヰデンジャウホウ【遺伝情報】

〘名〙 自己と同じ形質を複製するために、親から子へ、あるいは細胞分裂時に細胞から細胞へ伝えられる情報。DNAの塩基配列として符号化されている。

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デジタル大辞泉 「遺伝情報」の意味・読み・例文・類語

いでん‐じょうほう〔ヰデンジヤウホウ〕【遺伝情報】

自己と同じ形質を複製するために、親から子へ、あるいは細胞分裂時に細胞から細胞へ伝えられる情報。DNAデオキシリボ核酸)の塩基配列として符号化されている。→遺伝暗号

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化学辞典 第2版 「遺伝情報」の解説

遺伝情報
イデンジョウホウ
genetic information

生物はある形質を発現させるための情報をもち,またこれを親から子孫へ伝えるが,このような情報を遺伝情報という.遺伝情報の担い手遺伝子であって,その本体は2本鎖DNA(特殊なウイルスでは1本鎖DNA,1本鎖または2本鎖RNA)である.アデニングアニンシトシンチミンの4種類の塩基よりなるDNAの塩基配列塩基対原理によりメッセンジャーRNA(mRNA)に移され(転写),これが遺伝コードに従ってタンパク質のアミノ酸配列規定する(翻訳)ことによって遺伝情報を発現する.また,それには各段階に多くの因子が関与することが知られている.G.W. Beadleによって提唱された1遺伝子-1酵素説によれば,おのおのの形質発現に必要な酵素のアミノ酸配列をDNAが支配し,親から子孫へ伝えていくと考えられている.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「遺伝情報」の意味・わかりやすい解説

遺伝情報
いでんじょうほう

生物のもつ遺伝子から出され、遺伝形質を決定する情報。情報源は染色体をつくるDNA(デオキシリボ核酸)である。タバコモザイクウイルスなど、ある種のウイルスではDNAのかわりにリボ核酸(RNA)が情報源となる。染色体にある遺伝情報は細胞分裂のときDNA分子の半保存的複製により倍化され、細胞から細胞へ、また親から子へ同じ情報が伝えられる。遺伝情報は遺伝子を単位として発現される。遺伝情報発現の過程では、遺伝子DNAの単位構造であるヌクレオチドの配列が遺伝暗号となり、相補的な構造をもつ伝令RNAに転写される。遺伝暗号を写しとった伝令RNAは核の外へ出て細胞質中のリボゾームとよばれる小粒に付着し、そこでタンパク質のアミノ酸配列に翻訳される。このようにして合成されたタンパク質は酵素作用をもち遺伝形質を発現させる。ある生物の遺伝子DNAのヌクレオチド配列が変異原などにより変化すると、遺伝子のもつ遺伝情報が変化し、その生物は突然変異体となる。

[石川辰夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「遺伝情報」の意味・わかりやすい解説

遺伝情報
いでんじょうほう
genetic information

子生物はどのように個体発生をとげていくべきかという遺伝的規定を親から与えられるが,これを情報という見方からみたとき,遺伝情報という。具体的には,デオキシリボ核酸 DNAを構成するヌクレオチドが,遺伝情報の素材物質であり,ヌクレオチドが3個ずつ並んだ三つ組が,情報としての単位である。 DNAの情報は,翻訳されて蛋白質のアミノ酸配列となり,この蛋白質が酵素機能などの機能を発揮することによって,情報は形質へと表現される。細胞や組織全体の特性とか,形態的形質のような高次形質も,蛋白質という一次形質が複雑に相互作用し合って生じてきたものとみなすことができる。また形態的形質について認められる突然変異は,DNAでのヌクレオチドの差換えという遺伝情報レベルでの突然変異が拡大されて表現されたものといえる。

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世界大百科事典 第2版 「遺伝情報」の意味・わかりやすい解説

いでんじょうほう【遺伝情報 genetic information】

子が親に似るという現象を説明するために,親から子に伝わる情報があるという考えは,古くから存在したが,遺伝情報という概念が,科学的な意味で形をなしたのはメンデルの法則以後と考えてよい。〈独立の法則〉〈分離の法則〉〈優劣の法則〉の確立によって,両親から伝わった遺伝情報が,子の世代で実際に発現するかどうかにかかわりなく,保存され,次世代に伝えられることが明らかになった。ある生物のもつ独特の構造や機能を作るために必要な情報は莫大な量に違いないが,この情報も結局はある程度の独立性をもった素情報ともいうべき〈遺伝子〉の集合として理解できることを示唆したのもG.J.メンデルの功績である。

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栄養・生化学辞典 「遺伝情報」の解説

遺伝情報

 遺伝子に蓄えられている情報すなわち生物の特性を規定する情報.

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世界大百科事典内の遺伝情報の言及

【情報】より

…技術的情報は符号の系列であるから,情報をベクトルと考えヒルベルト空間の点とみなして幾何学的に扱う信号空間の理論もある。さらに,53年にDNAの二重らせん構造を提案したJ.D.ワトソンとF.H.C.クリックは,ガモフの示唆によって遺伝が情報の伝達であり,ヌクレオチドの配列パターンが遺伝情報であるとした。いまではその情報伝達(複写・翻訳)の機構も解明されており,遺伝子操作は遺伝子情報の加工にほかならない。…

※「遺伝情報」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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