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有理数全体のなす集合をQで表すことにする。Qの部分集合A1,A2を,A1={x∈Q|x<0またはx2≦2},A2={x∈Q|x>0かつx2>2}と定義すると,(A1,A2)は次の条件を満たす。A1とA2はともに空集合ではない。Q=A1∪A2。a1∈A1,a2∈A2であればa1<a2。一般に,以上の3条件を満たすQの部分集合の対(A1,A2)をQの切断という。このとき次の三つのいずれかが成り立つ。(1)A1に最大の有理数aが存在し,A2には最小の有理数は存在しない。(2)A1には最大の有理数は存在せず,A2には最小の有理数bが存在する。(3)A1には最大の有理数は存在せず,A2にも最小の有理数は存在しない。(1)のときはA1={x∈Q|x≦a},A2={x∈Q|x>a},(2)のときはA1={x∈Q|x<b},A2={x∈Q|x≧b}と表すことができる。一方,最初にあげた例はA1={x∈Q|x≦\(\sqrt{2}\)},A2={x∈Q|x>\(\sqrt{2}\)}と表すことができ,この\(\sqrt{2}\)は有理数ではないので(3)の場合にあたる。実数の全体のなす集合に対しても切断が定義できるが,このときは(1)または(2)の場合しか起こらない。J.W.R.デデキントはQの切断を使って実数を定義した。上の(1)の場合は切断(A1,A2)は有理数aを定め,(2)の場合は有理数bを定め,(3)の場合は無理数αを定める。したがって一つの有理数には(1),(2)の二つの型の切断が対応し,一つの無理数にはただ一つの(3)の型の切断が対応する。(3)の場合に対応する無理数αは直観的にはA1のどの数より大きい実数のうちで最小のもの,あるいはA2のどの数より小さい実数のうちで最大のものである。切断(A1,A2)が実数αを定め切断(B1,B2)が実数βを定めるとき,A1⊂B1であればα≦βと定義する。またC1={a1+b1|a1∈A1,b1∈B1},C2={a2+b2|a2∈A2,b2∈B2}とおくと,(C1,C2)はQの切断であり,実数γを定める。このときα+β=γと定義する。デデキントはこのような考え方によって,有理数の性質と切断の定義を使うだけで実数を説明することができることを示した。これをデデキントの実数論という。
射影幾何学においても切断という言葉が用いられるが,これは2直線の交点を求めるというような作図を意味していて,2点を結ぶというような作図を意味する射影という言葉と1対として用いられ,射影幾何学で基本的作図とされているものである。
執筆者:上野 健爾
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
字通「切」の項目を見る。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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