切断(読み)セツダン(その他表記)cut

翻訳|cut

精選版 日本国語大辞典 「切断」の意味・読み・例文・類語

せつ‐だん【切断・截断】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 物をたちきること。つながりやかかわりをきり離すこと。
    1. [初出の実例]「辞世の頌を書給ふ 五蘊仮成形 四大今帰空 将首当白刃 截断(セツタンす)一陣風」(出典:太平記(14C後)二)
    2. 「無遠慮な形式で筋違に切断(セツダン)されてゐた」(出典:明暗(1916)〈夏目漱石〉二一)
    3. [その他の文献]〔白居易‐太湖石詩〕
  3. 平面図形を直線で切って、その交わりを求めること。また、立体図形平面で切って、その交わりを求めること。
  4. 有理数全体を大小の順に並べておいて、ある所で二つに切ること。すなわち、有理数全体を次の、A、Bはいずれも少なくとも一つの有理数を含む、Aの有理数はBのどの有理数よりも大きい、という二つの条件をみたすように二つの組A、Bに分けることを切断または有理数の切断という。無理数の厳密な定義をあたえるのに、ドイツの数学デデキントがこの概念を用いたので、デデキントの切断ということもある。
  5. 順序集合Aの順序を大小の関係になぞらえて、Aをデデキントの切断のように二つに分けること。

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改訂新版 世界大百科事典 「切断」の意味・わかりやすい解説

切断 (せつだん)
cut

有理数全体のなす集合をQで表すことにする。Q部分集合A1A2を,A1={xQx<0またはx2≦2},A2={xQx>0かつx2>2}と定義すると,(A1A2)は次の条件を満たす。A1A2はともに空集合ではない。QA1A2a1A1a2A2であればa1a2。一般に,以上の3条件を満たすQの部分集合の対(A1A2)をQの切断という。このとき次の三つのいずれかが成り立つ。(1)A1に最大の有理数aが存在し,A2には最小の有理数は存在しない。(2)A1には最大の有理数は存在せず,A2には最小の有理数bが存在する。(3)A1には最大の有理数は存在せず,A2にも最小の有理数は存在しない。(1)のときはA1={xQxa},A2={xQxa},(2)のときはA1={xQxb},A2={xQxb}と表すことができる。一方最初にあげた例はA1={xQx≦\(\sqrt{2}\)},A2={xQx>\(\sqrt{2}\)}と表すことができ,この\(\sqrt{2}\)は有理数ではないので(3)の場合にあたる。実数の全体のなす集合に対しても切断が定義できるが,このときは(1)または(2)の場合しか起こらない。J.W.R.デデキントはQの切断を使って実数を定義した。上の(1)の場合は切断(A1A2)は有理数aを定め,(2)の場合は有理数bを定め,(3)の場合は無理数αを定める。したがって一つの有理数には(1),(2)の二つの型の切断が対応し,一つの無理数にはただ一つの(3)の型の切断が対応する。(3)の場合に対応する無理数αは直観的にはA1のどの数より大きい実数のうちで最小のもの,あるいはA2のどの数より小さい実数のうちで最大のものである。切断(A1A2)が実数αを定め切断(B1B2)が実数βを定めるとき,A1B1であればα≦βと定義する。またC1={a1b1a1A1b1B1},C2={a2b2a2A2b2B2}とおくと,(C1C2)はQの切断であり,実数γを定める。このときα+β=γと定義する。デデキントはこのような考え方によって,有理数の性質と切断の定義を使うだけで実数を説明することができることを示した。これをデデキントの実数論という。

 射影幾何学においても切断という言葉が用いられるが,これは2直線の交点を求めるというような作図を意味していて,2点を結ぶというような作図を意味する射影という言葉と1対として用いられ,射影幾何学で基本的作図とされているものである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「切断」の意味・わかりやすい解説

切断
せつだん
cut; section

数学において,切断という言葉は以下の意味に用いられる。 (1) 無理数を定義する方法として J.デデキントが導入した有理数の切断 (→無理数 ) 。 (2) 射影幾何学における射影や配景対応の際に使われる線束や面束を線や面で切る操作。 (3) ファイバー空間で,fAB が全射のとき,f(g(x))=x となる gBA ,つまり各 xB ごとにファイバーの点 g(x) をとった関数 g のことを切断または横断面という。 (4) cutという語は,数学基礎論で三段論法にあたる推論規則の意味に使われる。

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普及版 字通 「切断」の読み・字形・画数・意味

【切断】せつだん

切り離す。

字通「切」の項目を見る

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