共同通信ニュース用語解説 「Jリーグ百年構想」の解説
Jリーグ百年構想
長期的視野でJリーグが掲げる振興策。「スポーツでもっと幸せな国へ」を合言葉に、全国各地に芝生のグラウンドやアリーナ、多様な競技に対応する施設の拡充を進める。「する、見る、支える」というスポーツの楽しみ方を提案し、年齢や体力、技能、目的に応じて多くの人がスポーツを楽しめる社会の実現と文化の醸成を目指す。
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長期的視野でJリーグが掲げる振興策。「スポーツでもっと幸せな国へ」を合言葉に、全国各地に芝生のグラウンドやアリーナ、多様な競技に対応する施設の拡充を進める。「する、見る、支える」というスポーツの楽しみ方を提案し、年齢や体力、技能、目的に応じて多くの人がスポーツを楽しめる社会の実現と文化の醸成を目指す。
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日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が、その理念を具現化するために掲げたスローガン。Jリーグは、その立ち上げの時点から「日本のスポーツ文化を豊かなものとする」ことを理念の柱としてきた。興行として成功し、その結果日本のサッカーが強くなるだけではいけない。スポーツを見る楽しみとともに、それぞれが好きなスポーツを「する」楽しみを地域の人びとに提供し、世代を超えたふれあいの輪を広げようという趣旨であった。
ただ、1993年(平成5)のJリーグスタート時に人気が沸騰してしまったために、多くのクラブではサッカーを事業として成功させることに専念する状態が続いた。そこで当時のJリーグチェアマン川淵三郎(かわぶちさぶろう)が「もっと理念を具現化する活動をしてほしい」と各クラブに要望、1996年3月に「Jリーグ百年構想」のキャンペーンが始まった。
「子供からお年寄りまで、健康な人も障害をもつ人も、だれもが分け隔てなく気軽にスポーツを楽しめる環境」を目ざして、「地域に根ざしたクラブを日本各地につくる」。「50年、100年という長い歳月」がかかるかもしれないが、「長期的ビジョンをもって取り組んでいく」(「Jリーグ・ニューズ」第20号より)。
「百年構想」とは、あまりに現実味のないキャッチコピーであったが、「スポーツで、もっと、幸せな国へ。」というサブコピーが、底にある思想をよく表現していた。Jリーグ所属の各クラブは、サッカーだけでなく、地域のいろいろなスポーツの振興に力を尽くさなければならない。そして「将来的には、ヨーロッパの各都市にあるような、総合型の地域スポーツクラブになってほしい。こうしたクラブが全国各地の都市にある状態にもっていきたい」という願いがある。
「Jリーグを100クラブにしたい」と、2002年にJリーグ・チェアマンに就任した鈴木昌(まさる)は夢を語っている。2003年現在、J1が16、J2が12の計28クラブが在籍するJリーグであるが、大企業がバックにつかなくても、地域の応援で十分成り立つことが証明されれば、この100という数字はけっして夢ではなくなる。現に、アルビレックス新潟など、大企業に頼らずに大きく成長したクラブがいくつも出てきている。
しかし各クラブの「総合型スポーツクラブ」への取り組みはそう簡単には進まない。どこも、プロから中学生年代まで、最低四つのサッカーチームの運営で手いっぱいだからである。そのなかで、鹿島アントラーズがバスケット教室やテニス大会の運営にかかわったように、小さくても、地道な仕事は続いている。こうした取り組みには、Jリーグから補助金が出るが、最近では、「百年構想の一環事業」といえば、「それなら私たちも協力しよう」という企業が数多く出てきているという。2003年11月に東京学芸大学が地元小金井市、そしてJリーグのFC東京との提携で新しい地域総合型スポーツ・文化クラブを設立することを発表したが、これも「百年構想」の考えが社会に広まったひとつの表れだろう。
「百年構想」の取り組みは、総合型スポーツクラブ化への動きだけではない。全国に芝生のグラウンドや運動場を増やそうという動きは、2003年にJリーグ百年構想のキャラクターとして登場した「ミスター・ピッチ」のユニークさとともに、大いにアピールしている。前チェアマン川淵が熱心に主唱した学校の校庭を天然芝にする運動は、大きな流れになろうとしている。南九州や沖縄などにしかなかった「芝の校庭」が、いまや東京にも出現した。日常的に芝生の上で遊ぶと、情緒が安定し、「切れる」子供が大幅に減るという報告もある。これから、芝生の校庭はもっと増えていくだろう。
過去10年間で、天然芝のグラウンドの数は飛躍的に増えた。ワールドカップのキャンプ候補地では第一級の施設が誕生した。Jリーグの誕生以来、日本のスポーツ環境は大きく変わった。かつては、日本の芝は夏の暑さに合わせられていたため、冬には黄色く枯れるものであったが、いまでは、季節を問わず緑の美しい芝生を保つ技術が広まった。こうしたことも、「百年構想」キャンペーンの成果のひとつとしてあげられるだろう。
ただ、Jリーグは2003年に11シーズン目が終わったばかりである。「百年構想」も、8年を経て、ようやく理念が理解され始めてきたという段階である。目先のことに惑わされず、「もっと、幸せな国」を築くため、地に足のついた活動を継続していく必要がある。
[大住良之]
Jリーグのクラブ数は2008年現在、J1が18、J2が15の計33クラブになっており、16シーズン目となった。
[編集部]
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