芝生用の草本植物(シバまたは芝草)を、観賞、休養、運動、土止め等の目的で植栽した場所をいう。芝草を生産用に栽培している場所も芝生とよばれることがあるが、これは本来、芝地、芝原とよばれるべきものである。シバは古くから文献に登場し、万葉の時代には柴、志婆などの文字があてられた。その後、葉が細かくて多い植物の意味に用いられ、木ならばシバキ、草ならシバクサとよんだともいわれる。また、「繁葉(しばは)草」の意味をもつとの説もあるが、さだかではない。芝生は築山(つきやま)池畔の造園や一般家庭の庭の構成用、市民生活に必要な公園、緑地、運動場に利用されるほか、河川、道路等の傾斜面の崩壊防止、地表面保護に役だっている。
[堀 保男]
ヨーロッパではローマ時代に庭園の芝張りが行われたといわれるが、その材料の芝草は日本のイネ科のものとは異なった牧草類ともいわれる。わが国では平安時代に造園に利用されたともいわれ、『作庭記』にそれらしい記述がみられる。江戸時代に入ると、庭園材料として上流階級の間で築山に利用されるようになった。明治時代に入って外国人が居住するようになると、芝生は西洋庭園や公園にも盛んに利用され、一般に広まった。
[堀 保男]
[堀 保男]
冬に葉が枯れる種類である。性質は強健で繁殖力も強く、踏圧にも耐えるイネ科植物で、夏が生育期である(夏型)。
(1)コウライ(高麗)シバ 植栽されている芝草のなかでもっとも多い。葉先が軟らかく、葉も細くて光沢がある。
(2)ビロードシバ コウライシバよりも小形である。葉は細く、刈り込み・日照りに強いが、寒さには弱い。
(3)ノ(野)シバ 日本の山野に自生する野生の芝草で、前記2種より葉幅が広く、粗剛で葉先がとがり、葉の両面に長毛がある。
[堀 保男]
主として牧草類やその仲間の改良種が多く、利用に際しては1種類のみの単用使用と、2~3種を混合して使用する場合とがある。ブルーグラス類、バーミューダグラス類、ベントグラス類などのほか数種ほど実用に供されている。これらの西洋芝は日本芝と異なり常緑性のものがおもに用いられるが、成長が旺盛(おうせい)で草丈が30センチメートル以上にもなるものが多いので、たびたび刈り込みをするなどの管理作業が必要である。主としてゴルフ場や急斜面の保護に用いられる。
[堀 保男]
日本芝は土をつけたまま、切芝にして出荷する。日本芝、西洋芝の植え込み(芝張り)にあたっては、日照、土質(粘土質や砂利は不適)、排水(排水が悪いと根腐れをおこす)の3条件を整えることが、美しい芝草を育てるうえで肝要である。耕うん施肥された圃場(ほじょう)(芝畑)に芝草を筋状に植え付ける張芝(はりしば)法と、種子を播(ま)いて育てる播芝(まきしば)法があるが、前者が一般的である。根が十分張れるよう植栽地を深く耕し(20~30センチメートル)、同時に肥料(化成肥料1平方メートル当り10~30グラム)を混合して土表をならす。土中の小石や木片をあらかじめ除去し、土が落着いてから張り付ける。
[堀 保男]
芝生作りに際しての芝張りの手法には次の4種がある。
(1)平(べた)張り 切芝をすきまのないように並べて張り付ける方法で、新芽が出そろうと芝生になる。
(2)目地(めじ)張り 切芝を数センチメートルの間隔をあけて並べる張り方で、そのすきまを目地とよぶ。
(3)市松(いちまつ)張り 平張りの切芝を1枚置きに除いて市松模様に張る方法で、平張りの半分の量でまにあう。
(4)条(すじ)張り 切芝を1列に並べた張り方で、主として斜面に利用される。等高線に並べた横張りが多い。
芝を張るときは、切芝が浮き上がった状態であると活着(発根)が悪く、匍匐(ほふく)茎も発育しないので、芝草が土と密着するように押さえ付ける。また斜面張りには竹杭(ぐい)をつくり芝止めする。張り付けが終わったら細かく軽い粒状土をかけて覆土する。これを目土(めつち)といい、芝草の発根を助ける。目土をかけたら十分灌水(かんすい)する。目土は年1回、時期は3月がよい。
[堀 保男]
張芝に用いる日本芝は、芝畑で栽培されたものを一定の大きさに切り取って使用する。これを切芝とよび、一般に芝坪という生産規格で取引される。これは5尺平方(約2.3平方メートル)に張った芝生を1坪(3.3平方メートル)とみなすもので、切芝40枚(1枚が37.5センチメートル×15センチメートル)で1坪となる。したがって平張りすれば実質2.3平方メートル分しか張り付けられない。なお、真の1坪分を切り上げたものを本坪とよぶが(切芝1枚が45センチメートル×30センチメートル)、山地の法(のり)面や土止め工事で用いられるにすぎない。
西洋芝は、主として種子を播いて芝生をつくるものが多い。発芽と同時に美しい芝生となるため、一年中緑を保つゴルフ場や広場に利用される。近年改良が進み、アメリカのコースタルプレーン農業試験場で育成したティフトン系のものは、生育も早くじょうぶなため一般の芝生にも用いられつつある。
[堀 保男]
(1)芝刈り 茎葉が伸びすぎると見苦しくなるので、よく密生させるためには重要な作業である。4~10月までの生育期は月2、3回程度の割合で行う。芝刈り鋏(ばさみ)や鎌(かま)でよいが、広い場合はローンモーア(家庭用にはロータリー式がよい)を用いると能率的である。なお盛夏の高温乾燥期間は強く刈ると生育が悪くなることもある。
(2)施肥 芝草は生育が旺盛なだけに養分消費も多く、生育中は薄い液肥か少量の化成肥料を月1、2回施す。肥料は三要素(窒素、リン酸、カリ)に微量要素を加えたものがよい。即席としては尿素を10リットルの水に30グラム程度溶かして如露で散布するか、化成肥料を1平方メートル当り30グラム内外散布してもよい。
(3)雑草駆除 芝生には芝草以外の雑草(オオバコ、シロツメクサ、チドメグサ、スズメノカタビラなど)が生えやすい。雑草が密生すると芝草の生育が衰えるので、除草は重要な作業である。手取りのほか除草剤散布の方法もある。
(4)病虫害駆除 梅雨のころから発生するサビ病がおもで、害虫には根を食害するコガネムシ類などの幼虫がいる。定期的に農薬を散布する。
(5)灌水(かんすい) 夏季は高温乾燥のため生育が衰えて葉色が悪くなるので、土中に十分水分を補給してやる。
(6)目土入れ 新しい土で芝草の根元を覆ってやることで、根張りがよくなりじょうぶな芝となる。目土用土は雑草種子、小石などの混入していないものを用いる。
(7)芝地の穴あけ 年とともに芝地は固まって土中の空気が少なくなり、根張りや排水が悪くなるので、器具を用い土中に穴(スパイク)をあけて空気を入れてやる。
(8)その他 刈った芝葉が残って堆積(たいせき)すると生育を阻害し、病虫害の発生を助長するので、刈取り残葉は熊手(くまで)でかき取り、いつも清潔にしておく。また、2月ごろ芝焼きを行ってから目土をかけると、美しい芽出しに効果があり、病害虫駆除にも役だつ。
[堀 保男]
『江原薫著『芝草と芝地 第2増訂』(1988・養賢堂)』▽『日本芝草学会編『最新芝生・芝草調査法』(2001・ソフトサイエンス社)』
本来丈の低い葉の密生した植物が一面に生じている場所をいうが,現在は芝生用植物(芝または草の場合は芝草ともいう)を観賞,修景,スポーツ,レクリエーション,地表面保護などの目的で低く群生するようにつくられた場所を指している。
最初の利用についてははっきりしないが,草原がスポーツ,レクリエーション,地表面保護などに利用された例は古くからあったと考えられる。庭園に芝生がつくられたのも紀元前からといわれ,4世紀になるとローマの庭園に芝生とみられるものがみられる。イギリスを含む中部ヨーロッパでは16世紀ころ草原を利用したスポーツ,レクリエーションが盛んになり,さらに19世紀以降の欧米を中心とした公園の設置,利用の発展が,芝生の普及を大きく進めた。日本でも庭園における芝生利用は古くからあったと考えられ,平安時代の寝殿造庭園に芝生らしい空間がある。江戸時代以前はおもに上流階級の利用にとどまっていた芝生は,それ以後庶民の庭や,町中の火除地などにも使われるようになった。明治以降は公園,ゴルフ場などが各地に続々設置されるとともに,芝生の利用形態も急速に欧米化され,今日に及んでいる。
芝生は人に踏まれることが多く,また刈込みが行われる。このために,芝生に使用する植物はそれに耐える性質をもつことが基本的条件となる。さらに,強健で生育がよく,萌芽力が強く,地表に低く広がり,葉が小さく密生し,人畜無害であることが望まれる。また利用するためには草本,つまり芝草がよい。上記条件を備えている草本はイネ科植物に多く,芝草は多くはこれに属する。芝草は生態的に二分される。一つは,春に萌芽して生長を始め,夏に生長がもっとも盛んになり,晩秋に生長を停止し,地上部が枯れて春まで休眠する夏緑型(夏型,暖地型)である。もう一つは,春と秋に生長最盛期を迎え,夏にやや生長が劣り,冬も弱い生長を続ける常緑型(冬型,寒地型)である。また利用の歴史から,日本芝と西洋芝に分けられる。前者は古来日本で使われてきたもので,後者は欧米を中心に利用され,日本では明治以降利用されるようになったものである。日本芝はすべて夏緑型であり,西洋芝は常緑型が多いが,夏緑型もある。主要芝草を次に示す。
(1)シバ類 夏緑型。日本芝はほとんどこれに属する。シバ(ノシバなど),コウシュンシバ(チュウシバ,ヒメコウライシバ,チョウセンシバなど),コウライシバ(ビロードシバなど),その他数種ある。性質強健,やや寒さに弱く,古くから日本の庭園に植栽され,現代も公園,ゴルフ場その他に広く使われる(ゴルフ場のグリーンに用いられるコウライシバとは植物学的にはコウシュンシバのことである)。
(2)バミューダグラス類 夏緑型西洋芝であるが,日本に自生するギョウギシバもこの仲間である。性質はシバ類に似て強く,生長が速く,芝生の造成が速くできる。アメリカ,ジョージア州のティフトンで育成された品種(ティフグリーン,ティフウェーその他)が公園などによく使われる。
(3)ベントグラス類 常緑型西洋芝の代表。美しい常緑芝生をつくるが,日本では暑さに弱く,病害が出やすく,管理が難しい。クリーピングベントグラス,コロニアルベントグラス,ベルベットベントグラスなど品種が多い。日本ではゴルフ場のグリーン以外にあまり使われない。
(4)ブルーグラス類 常緑型西洋芝。ベントグラス類と似た欠点がある。北海道ではケンタッキーブルーグラスとその品種が広く庭園,公園などに使われている。
(5)フェスク類 常緑型西洋芝。レッドフェスク,チューイングフェスクなどがあるが,日本では芝生用よりものり面緑化用によく使われる。
(6)ライグラス類 常緑型西洋芝。ペレニアルライグラス,イタリアンライグラスなどがあり,種子の発芽,その後の生長がよいので,芝生の早期造成用に使われ,またのり面緑化用にも使われる。
(7)その他 夏緑型西洋芝のセントオーガスチングラスは日本南部の芝生に使われる。
種子をまく播種(はしゆ)法,匍匐(ほふく)茎を短く切断して種子のようにまく播芝(まきしば)法,芝生状のものを方形または帯状にはいで張り付ける張芝(はりしば)法がある。日本芝は種子の発芽が悪く,張芝法,播芝法が一般に行われるが,種子を薬剤処理して発芽促進させる方法が発見されて実生法も可能となった。西洋芝は播種法が多いが,品種によっては張芝法,または播芝法の変形の植芝法が用いられる。管理としては芝生を低く密生状態にし,芝草の根の機能を活発にし,萌芽,生長を促し,葉色をよくするなどの目的で,刈込み,施肥,灌水,通気,目土(土を薄く表面に散布),鎮圧,除草,病虫害防除などを行う。そのほか防寒,部分張替え,芝焼きなどがある。管理作業は大面積の芝生では管理用機械,薬剤使用により省力化する。
執筆者:北村 文雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 リフォーム ホームプロリフォーム用語集について 情報
…経緯ともに60番手以上の細い綿糸を使って粗目に織った薄手の織物。フランスのランLaonで作られたところからこの名があるといわれ,もともとは薄い亜麻織物(リネン)であった。現在では木綿のほか麻,レーヨン,ポリエステルなどでも作られる。やや張りがあり透ける織物で,ボイルほどさらりとした感触はなく,オーガンディーより柔らかである。とくにくせのない布地で仕上げ法によりシルキーローン,ハンカチーフローンなどがある。…
…通常葉の葉身は細長く,長さ5~10cm,扁平で,葉面に毛がある。直立茎は踏圧,刈込みなどの刺激が与えられると,しばしば匍匐茎に転化し,二次的に直立茎を出し,また下節から不定芽を生ずるので,芝生が密生状態になる。5~6月ころ直立茎の上部から花茎を出し,総状花序をなして,小穂を多くつける。…
※「芝生」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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