日本大百科全書(ニッポニカ) 「MoMAP.S.1」の意味・わかりやすい解説
MoMA P.S.1
もまぴーえすわん
MoMA PS1
アメリカのニューヨーク市にあるアート・センター。旧、P.S.1コンテンポラリー・アート・センター。1976年に開館した。1970年代以降、新たな美術スペースとして注目を集めた「オルタナティブ・スペース」(作品を収蔵する美術館でも作品を売る画廊でもない作品発表の空間)の先駆けとして現代美術の重要な拠点となった。2000年MoMA(ニューヨーク近代美術館)と統合し、「MoMA PS1」となった。
展示施設に改装した建物は、1893年から1963年までロング・アイランド・シティ第一区小学校(Public School 1)として使用された建物である。旧センターの名称はこの学校名に由来する。当初この建物をアート・スペースとして改装することを目的として、1971年ディレクターのアラナ・ヘイスAlanna Heiss(1943― )と映画・演劇・建築評論家のブレンダン・ギルBrendan Gill(1914―1997)が「美術・都市資源研究所」という名称で活動を開始した。1976年改装が完了し開館。同年マンハッタンのトライベッカ地区に「クロックタワー・ギャラリー」という別館も開館した。1997年、ロサンゼルスに拠点をおく建築家フレデリック・フィッシャーFrederick Fisher(1949― )の設計により本館の増改築が行われ、屋外ギャラリーなどが設けられた。
おもな展覧会には、開館記念展である「Rooms」展(1976)、活動初期のジャン・ミシェル・バスキアやキース・へリングが出品した「ニューヨーク/ニュー・ウェーブ」展(1981)、MoMAとの統合後行った大規模な「大ニューヨーク」展(2000)などがある。また、1976年から2000年まで「インターナショナル・スタジオ・プログラム」というアーティスト・イン・レジデンスを行った。これは、毎年19名程度のアーティストに、ロング・アイランドのアトリエ12室と、トライベッカのアトリエ7室を無料で貸し出すほか、これらのアーティストの作品を掲載したカタログを発行するなど、アーティストが商業画廊や美術館の買い上げに頼らずに活動できるよう、サポートするプログラムであった。
[鷲田めるろ 2021年12月14日]