日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニューヨーク近代美術館」の意味・わかりやすい解説
ニューヨーク近代美術館
にゅーよーくきんだいびじゅつかん
Museum of Modern Art, New York
ニューヨークにある近代・現代美術のもっとも代表的な美術館の一つ。略称MoMA(モマ)。1929年、5人の収集家により高層オフィスの14階に創立開館。39年に五番街に近い現在地に移る(設計P・ゴッドウィン、E・D・ストーン)。1880年代の後期印象派から、20世紀のヨーロッパ、アメリカでおこったキュビスム、表現主義、未来主義、ダダ、シュルレアリスム、抽象表現主義、ポップ・アートなど革新的な芸術運動のなかに誕生した作品を、年代順に、系統的に展示する。絵画、彫刻だけでなく、写真、ポスター、グラフィック・アート、建築素描、映画フィルムを所蔵。常時特別展を企画して、従来の芸術を新たな角度から探ると同時に、新しい芸術やその動向を紹介して評価を下すという、現代の視覚芸術を啓蒙(けいもう)指導する方針を打ち出している。こうした活動が芸術家、批評家、一般大衆の大きな刺激となり、新しい芸術をはぐくむ新たな芸術の中心地としてのニューヨークの推進力ともなっている。近代芸術の旗手ピカソが有名な大作『ゲルニカ』を1982年まで寄託したのも、その多面的な活動と役割を評価したからにほかならない。隣接地を買収して80年から建築家C・ペリを陣頭に総合的な増改築を行った結果、84年5月、それまでの倍以上の展示スペースをもつ新しい美術館に生まれ変わった。2004年11月、谷口吉生(よしお)の設計によりリニューアル・オープン。
[湊 典子]
『『世界美術の旅6 ニューヨーク物語 下』(1988・世界文化社)』▽『『週刊世界の美術館8 ニューヨーク近代美術館1』(2000・講談社)』▽『『週刊世界の美術館48 ニューヨーク近代美術館2』(2001・講談社)』▽『MOMA出版局編『ニューヨーク近代美術館350作品ガイド』(2004・ミュージアム図書)』