商品や企業の紹介を目的とした印刷物。目録、要覧、便覧、案内ともいわれるが、漢字を当てはめて型録と書かれることもあった。カタログは、ギリシア語のカタロゴス(登録する)が、ラテン語のカタログスを経由して1327年ごろフランス語のカタログになった語で、1460年ごろそのまま英語に転化した。カタログはヨーロッパでは、最初は単に書名を並べただけの本のリストとして出現しているが、カタログで直接売る商法が発達していたアメリカでは、ダイレクト・メールや新聞折込広告と併用されて広く使われてきた。20世紀初頭からの通信販売・小売りチェーン組織シアーズ・ローバック社のものはとくに有名である。日本では1780年(安永9)の『自遊從座爲(じゆうじざい)』、1787年(天明7)の『七十五日』など、飲食に関するものがカタログとして古い。なかでも1824年(文政7)の『江戸買物独(ひとり)案内』には商家約2400が登録されており、案内カタログの集大成といえる。1885年(明治18)の『東京商工博覧絵』は、広告主の協賛をうたった最初の共同カタログである。
近年、博覧会、展示会、見本市、即売会、料理教室など各種イベントが多くなるにつれて、各企業の販売戦略のためのツールとしてカタログの媒体価値が改めて認識されるようになった。それに伴って用途別に営業案内、入社案内、商品リスト、海外輸出用マニュアルなど和文、欧文のカタログが用意されている。また日本でも豪華なカタログをつくって通信販売を展開する百貨店、スーパー、出版社、不動産業者、レジャー産業なども増えている。
一般的にはカタログという概念は近代合理主義の産物であり、カタログ自体も一種のデータベースであった。たとえば、ミグ・バローズ社の1889年版『情報源』は、521通りの料理法、236通りの家庭医療法、150通りの論題および2万件の知識を包蔵し、ロングセラーにもなっている。また、1968年刊『ホール・アース・カタログ』シリーズは、アメリカ文化を1冊ごとに凝縮させた類例のないカタログとして紹介された。日本の出版界はこの編集、装丁、写真の手法から影響を受け、1970年代にムック、情報誌、タウン誌などを誕生させている。そもそも雑誌の起源が17世紀に英仏で発行された書物カタログであることを思うと、カタログと雑誌は深い縁がある。
このような社会にあふれる情報をカタログ化して、電子メディアを通じて検索できるようにしたのが1980年代のビデオテックスである。いまや世界に共通するカタログ=「電話帳」を利用するテレマーケティングというニュービジネスが、インターネットを使って活発に行われる時代となった。
[島守光雄]
冊子形式の商品目録や営業案内。商品などの特性,機能,価格などの判断基準となる事項を記載したもの。他の広告媒体に比べ,説得性を強めるためにデータの整理,分別,評価がよくなされていることが特徴。語源はギリシア語のカタロゴスkatalogos(数え尽くすこと)で,ラテン語catalogusを経由してフランス語のカタログcatalogueとなる。日本では終戦直後まで型録(カタログ)で通用していた。カタログは1470年代にヨーロッパで本のリストとして登場し,アメリカでは19世紀末から,シアーズ・ローバック社に代表される,カタログで直接に多数広範な顧客から受注を得るカタログ商法が発達した。日本では1780年(安永9)に江戸で出された《自遊従座為(じゆうじざい)》が最も古いが,約2400戸の商家が収録された1824年(文政7)の《江戸買物独案内(ひとりあんない)》(買物独案内)も案内カタログとして逸品である。今日,印刷物としてのカタログは,きわめてさまざまな形態で大量にはんらんしているが,その総量はとらえがたい。また近年の電子映像技術の発達により,ビデオディスクなどを利用したものが,店頭のショッピング案内などに活用され,カタログとしての機能を果たしつつある。カタログによる〈整理された商品情報〉のはんらんは,1960年代末のアメリカの若者たちによる情報交換運動と結びついて,〈整理された断片情報〉を特色とする〈カタログ文化〉を生むにいたり,《全地球カタログWhole Earth Catalog》(1969)をはじめとする一連のカタログ・ブームを招いた。
執筆者:島守 光雄
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…通常は恒星の天球上の位置を記載したカタログを意味するが,スペクトル,視線速度などの物理量の各種専門的な星表もある。古代の中国の星表には魏の時代(前4世紀ころ)の掃天観測に基づくといわれる〈石氏星経〉などがある。プトレマイオスの《アルマゲスト》にある星表はヒッパルコスの前2世紀ころの1022個の星の位置観測を138年の座標に換算したもので,その後中世までの諸星表はこれを原典として座標を換算しただけのものが多い。…
…それらは,大別して,(1)パウサニアスの《ギリシア案内記》に代表されるような旅行記・案内記類と,(2)大プリニウスの《博物誌》に見られるような芸術家の名まえ,およびその作品や興味深いエピソード類,に分けることができる。前者は,実際に残されている神殿や彫刻についての説明で,中世の巡礼案内やルネサンス以降の都市案内記を経て,現代の美術館(および展覧会)のカタログにまでつながるものであり,後者は,芸術家の伝記的研究の原初的形式といえる。この両者は,中世においても多かれ少なかれ存在したが,しかし,作品や芸術家を時間の流れのなかに位置づけようとした明確な歴史意識が登場してくるのは,ルネサンス期,とくに,G.バザーリの《芸術家列伝》(1550。…
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