改訂新版 世界大百科事典 「RAPP」の意味・わかりやすい解説
RAPP (ラップ)
ソ連邦の文学団体。正称はロシア・プロレタリア作家協会Rossiiskaya assotsiatsiya proletarskikh pisatelei。1920年に設立されたVAPP(ワツプ)(全ロシア・プロレタリア作家協会Vserossiiskaya assotsiatsiya proletarskikh pisatelei)を前身として,25年1月に発足した。同年6月の《文芸の分野における党の政策について》の共産党中央委員会決議の後,ワルジンらの左派グループは離脱し,アベルバフL.L.Averbakh(アウエルバハとも呼ぶ)を書記長に,理論機関誌《RAPP》,隔週批評誌《文学哨所》を擁して活動した。リベジンスキー,フールマノフ,キルションVladimir Mikhailovich Kirshon(1902-38),後にファジェーエフ,エルミーロフVladimir Vladimirovich Ermilov(1904-65)らが中心メンバー。最初は〈古典に学べ〉などの穏健路線が打ち出されたが,ボロンスキーAleksandr Konstantinovich Voronskii(1884-1943)らの同伴者文学擁護派と激しい論争を繰り返すうち,政治主義的傾向が強まり,ゴーリキーやショーロホフをも含む非プロレタリア系作家に卑俗社会学的,世界観偏重の非難を浴びせ,その批評は〈RAPPの棍棒〉と恐れられた。〈生きた人間〉〈唯物弁証法的創作方法〉など,連発された創作スローガンも,実作と遊離して実りをもたらさなかった。32年4月,党中央委員会決議によって,他の文学団体とともに解散させられた。
執筆者:江川 卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報