同伴者文学(読み)どうはんしゃぶんがく

世界大百科事典 第2版の解説

どうはんしゃぶんがく【同伴者文学】

1920年代のソビエト文学に用いられる用語で,プロレタリア作家ではないが,十月革命への同調を示した作家たちの文学をいう。トロツキーが文芸論集《文学と革命》(1923)で〈同伴者poputchiki〉の呼称を用いたのに由来する。レオーノフ,フェージン,ピリニャークバーベリブルガーコフゾーシチェンコカターエフ,エセーニンら旧知識人系,農民系,都市小市民系など,雑多な作家を含む。亡命から帰国後のA.N.トルストイエレンブルグ,LEF(レフ)(芸術左翼戦線)や〈構成主義文学センター〉所属のマヤコーフスキーパステルナークらもこの名で呼ばれた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

同伴者文学
どうはんしゃぶんがく

1920年代、ソ連体制下のロシアで、社会主義革命を受け入れながら、プロレタリア的世界観に完全には同調できない、主として知識人出身の作家をさすことばとして用いられた。トロツキーが文学論集『文学と革命』(1923)のなかで、革命の「同伴者(ポプートチキ)」попутчики/poputchikiということばを用いたのが最初。エセーニン、ピリニャーク、フェージン、バーベリ、イワーノフ、チーホノフ、レオーノフら、さまざまな傾向の作家を含む。批評家ボロンスキーを編集長とする文芸誌『赤い処女地(クラスナヤ・ノーフィ)』が主要な発表機関で、プロレタリア文学系の文学団体ラップなどからは、しばしば政治的非難の対象にされたが、芸術的には質の高い作品を残した。1934年のソ連作家同盟設立後、この呼称は用いられなくなる。日本でも昭和初年、プロレタリア文学運動の組織外にありながら、立場・主張の近かった野上弥生子(のがみやえこ)、山本有三(ゆうぞう)、広津和郎(かずお)、芹沢光治良(せりざわこうじろう)らをこの名でよんだことがある。[江川 卓]

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世界大百科事典内の同伴者文学の言及

【プロレタリア文学】より

…しかし,その観念的ロマン主義にあきたりないD.A.フールマノフ,F.V.グラトコフ,ベズイメンスキーAleksandr I.Bezymenskii(1898‐1973)らの作家,詩人が,22年にプロレタリア文学グループ〈十月Oktyabl’〉に結集し,それがVAPP(ワツプ)(全ロシア・プロレタリア作家協会)に発展するあたりから,ソ連共産党の文芸政策と密接なかかわりをもつようになる。ロシア・プロレタリア文学は,Yu.N.リベジンスキーの《一週間》(1922),フールマノフの《チャパーエフ》(1923),A.S.セラフィモービチの《鉄の流れ》(1924),A.A.ファジェーエフの《壊滅》(1927),ベズイメンスキーの詩作など,しだいに実作面での成果をあげていくが,全体としては〈同伴者文学〉や,LEF(レフ)(正称は芸術左翼戦線Levyi front iskusstva)を中心にしたアバンギャルド文芸運動の創作水準に立ちおくれていた。24‐25年には,L.D.トロツキー,A.K.ボロンスキーらをまきこんで,党の文芸政策が大きな論争の的になり,25年の党中央委員会決議では,創作分野での〈自由競争〉の原則が打ち出された。…

※「同伴者文学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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