改訂新版 世界大百科事典 「同伴者文学」の意味・わかりやすい解説
同伴者文学 (どうはんしゃぶんがく)
1920年代のソビエト文学に用いられる用語で,プロレタリア作家ではないが,十月革命への同調を示した作家たちの文学をいう。トロツキーが文芸論集《文学と革命》(1923)で〈同伴者poputchiki〉の呼称を用いたのに由来する。レオーノフ,フェージン,ピリニャーク,バーベリ,ブルガーコフ,ゾーシチェンコ,カターエフ,エセーニンら旧知識人系,農民系,都市小市民系など,雑多な作家を含む。亡命から帰国後のA.N.トルストイやエレンブルグ,LEF(レフ)(芸術左翼戦線)や〈構成主義文学センター〉所属のマヤコーフスキー,パステルナークらもこの名で呼ばれた。中心的な組織者としては雑誌《クラスナヤ・ノーフィ(赤い処女地)》の編集長ボロンスキーAleksandr Konstantinovich Voronskii(1844-1943。1927年トロツキストとして解任)があり,彼がRAPP(ラツプ)派の非難・攻撃から同伴者文学の芸術性を擁護した功績は大きい。1932年の文学団体解散決議,34年の作家同盟成立後はこの呼称も廃れた。日本でもプロレタリア文学運動期に野上弥生子,山本有三,広津和郎らがこの呼称で呼ばれたことがある。
執筆者:江川 卓
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報