精選版 日本国語大辞典 「批評」の意味・読み・例文・類語
ひ‐ひょう ‥ヒャウ【批評】
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事物の美点や欠点をあげて、その価値を検討、評価すること。狭義に芸術批評、ことに文芸批評をさすことも多いが、広義には政治、経済、科学、スポーツから日常生活に至るまで、人間営為のすべてを対象とする。その文章化されたものを評論という。真の批評の根底にあるものは批評意識ないしは批評精神であり、この意味での批評は批評家の専有物ではない。豊かな文化が築き上げられるためには、時代と場所を問わず公衆の健全な批評意識が不可欠であり、古代においてアテネの市民が実践したところのものであった。批評精神の鈍化・喪失が文明の滅亡につながり、新たな批評精神が新文明の勃興(ぼっこう)につながった例はあまりにも多い。また批評は、形を変えて、人間の精神活動のあらゆる局面に伏在する。バルザック、チェーホフ、志賀直哉(なおや)を含め、東西の多くの作家が批評家を作家の寄生虫ときめつけて批評家無用論を唱え、一方、批評家の作家に対する劣等感もまた覆うべくもないが、作家の創作活動そのもののなかに批評が濃密に存在し、これなしには創作活動の存立自体が揺らいでくるという事実はとかく見落とされがちである。出版者にも、商業主義に毒されることが多いとはいえ、独自の批評意識があり、世評、ベストセラー、コンクールなど多数決の論理もまた個人の批評意識を集約する。
[小林路易]
批評の基本は判断であり、判断は事実判断から価値判断へ、換言すれば真偽・黒白の判断から優劣・長短の判断へと向かう。前者に傾くと「客観批評」となり、後者に傾くと「主観批評」となるが、主観批評は傾きすぎれば独断となる。客観批評と似て非なるものに「裁断批評」があり、これは外的な基準を設け、それに照らして判断する批評方法である。現象界は理想界の映像であり、その現象界をさらに模写する芸術は真実から三重に遠ざかっているとしたプラトンのイデア論哲学に基づく芸術排斥論はその好例である。これに反して「印象批評」は外的な尺度を用意せず、個人的・直覚的な好悪を判断基準とする。アナトール・フランスは「人はけっして自分自身から出ることができない」といい、裁断批評の存在意義そのものを否定した。
[小林路易]
いずれにせよ価値の判断は究極において個人的・相対的であり、よりよきものへの努力が払われているか、よりよきものと比較してどこが足りないか、そしてそのよりよきものとは何かを不断に模索するという高度の精神的葛藤(かっとう)を通して行われる。為政者も一般大衆も、作家も批評家も読者も、つねに政治的・倫理的・宗教的なセクト主義に偏し、人間本来の共通基盤から乖離(かいり)する危険にさらされている。その自浄作用としての批評は、伝統に流されず、時流におもねらず、固定観念や常識を超越したところに位置しなければならない。過去のあらゆる意味での優れた批評の実行者は、多かれ少なかれアウトサイダー(社会からの孤立者)的な要素をもち、例外なく優れたモラリスト(人間の原点を見据える哲学者)であった。
[小林路易]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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