知恵蔵 「アンチ基礎づけ主義」の解説 アンチ基礎づけ主義 現代米国の哲学者ローティの哲学的姿勢を示す言葉。なんらかの知識の正しさを証明することを「基礎づける」というが、あらゆる知識を究極的に基礎づけうるような絶対の根拠がどこかにあると考え、それを示すことこそ哲学の使命である、とする哲学上の姿勢を、ローティは「基礎づけ主義」と呼んで批判する。「われ思う、ゆえにわれあり」を究極的に確実な真理とみなし、それを土台としてあらゆる知識を証明しようとしたデカルトなどが基礎づけ主義の典型とされるが、ローティによれば、カント、フッサール、論理実証主義などのこれまでの哲学は、どれも基本的に基礎づけ主義なのである。ローティは、ウィトゲンシュタイン哲学とプラグマティズムを援用しつつ、知識の究極的な基礎づけが成立しえないことを主張する。なぜなら、なんらかの知を正当化したり否定したりすることは一定の共有されたルールによってのみ可能だが、しかしそのルールは、あくまでもそれぞれの共同体によって異なる慣習的なものにすぎないからである。こうしてローティは、知の究極的根拠(真理)を確保しようとする野望を捨てるべきであると主張する点で、ポストモダン思想の立場に近づいている。 (西研 哲学者 / 2007年) 出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報 Sponserd by