フォルスタッフ(読み)ふぉるすたっふ(英語表記)John Falstaff

日本大百科全書(ニッポニカ) 「フォルスタッフ」の意味・わかりやすい解説

フォルスタッフ
ふぉるすたっふ
John Falstaff

イギリスの劇作家シェークスピアの作中人物で、史劇『ヘンリー4世』に登場する老騎士。太鼓腹(たいこばら)の大酒飲みで、大言壮語をするが実は臆病(おくびょう)者。青年時代のハル王子親友で、王子に悪事を勧める。フォルスタッフは強盗まがいのことをやってのけたり、募兵金の上前をはねたり、戦場に出て強敵に出会えば死んだふりをするなど、騎士の風上に置けない人物であるが、陽気な楽天家で、独特のユーモアに満ちている。ローマ喜劇に源を発するミレス・グロリオソスとよばれる、ほら吹き兵士の系列に属する人物のタイプであるが、名誉をむなしいものと断定するなど、新しい市民階級の理念の代弁者でもある。伝説によれば、この劇を好んだエリザベス1世が、恋するフォルスタッフを見たいと所望したため、シェークスピアが書いたのが『ウィンザーの陽気な女房たち』であるという。ここでは2人の人妻に同じ恋文を送って愚弄(ぐろう)される老好色漢となっている。

小津次郎

『中野好夫訳『ヘンリー4世』全二巻(岩波文庫)』『大山敏子訳『ウィンザーの陽気な女房たち』(旺文社文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android