…
【日本】
日本の荘園についての従来の研究は大きく二つの潮流に分かれる。 第1は荘園を私的大土地所有の形態とみて,その内部構造を究明しようとする流れで,近代史学史の主流をなし,中田薫,朝河貫一,牧健二らにより,西欧との比較を通して確立した見方である。ただ中田薫が荘園領主権を公法上の支配権とし,朝河貫一が荘園とマナーの相違を強調,牧健二が職(しき)の官職的・公法的側面に着目するなど,西欧の封建制との違いにそれぞれ注目していることは見のがせない。…
…宮崎門下の中田薫もドイツへ留学し,はじめ〈比較法制史〉講座を,宮崎の停年退官後は〈日本法制史〉講座を担当したが,日本法制史の研究にあたってほとんど終始ドイツ法制史との比較という方法をとりつづけた。 他方,京都帝国大学ではじめて法制史を講じた三浦周行は,帝国大学で学んだものの実質的には水戸学の流れをくむ学者で,ヨーロッパの歴史にはほとんど関心を示していないが,その後継者牧健二はドイツ封建制との比較で日本の武家支配体制を探究する方法を採用している。 ただ,同じく比較史的方法を採っても,ヨーロッパと日本との間にみられる類似性に重点をおくか,相違性に重点をおくかは,学者の個性や学統によるのであって,小中村と人的つながりのなかった宮崎とその学統は前者,水戸学流の三浦とその学統は後者に属する。…
※「牧健二」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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