改訂新版 世界大百科事典 「〓経」の意味・わかりやすい解説
経 (こけらぎょう)
ヒノキ材を削った30cm内外の細片(杮)に経文を墨書したもの。頭部を圭頭(山型)にして頸部に切込みを入れた板碑状のものと,五輪塔状のものがあり,古記録では〈率塔婆経(そとばぎよう)〉と称している。主として如法経会(によほうぎようえ)などの写経会に紙に写す場合と並んで行われた。中世には造塔の功徳と写経の功徳をあわせもつものとして自他の作善・追善に好んで用いられ,法華三部経,浄土三部経や名号(みようごう),真言(しんごん)に至るまで多種の経文が書写されている。法式(ほつしき)にのっとり数人の書き手が分担して短時日に書写する方式がとられており,原則として柿20本を1組として柿の表裏または表のみに書写し,一法会分を渦巻状に束ねて経供養を行い,ときには経塚などに埋納した。
執筆者:木下 密運
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報