仏教用語。サンスクリットのグナguṇaの訳。善い行為には,すぐれた結果を招く力が徳としてそなわっていることをいう。善を積み,あるいは修行の結果,むくいとして得られる果報,恵みという意味で福徳,利徳,利益,神仏の恵みを指し,またすぐれた結果をもたらす能力をもいう。造寺,造仏,写経,祈禱などの善行為には,現在または未来において幸福,利益をもたらす能力があるとみる。そして造寺造仏などの,よいむくいを受けるべき因としての善行を指して,善根(ぜんごん)功徳または功徳善根などという。功徳善根とは福祉のもとたる善根との意味である。善い行為には福徳,利益をもたらす価値ある特質,すぐれた徳性があるとみるのである。因としての善行為と果としての利益には,宗教的に純粋なものと世俗的なものとがあるが,中国の浄土教家曇鸞(どんらん)は,前者を真実功徳と賞し,後者を不実功徳とけなしている。新宗教のなかには,世俗的な功徳を民衆に説くものが多い。
執筆者:伊藤 唯真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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